バーチャルから医療用まで、最新の電脳ペットの世界

電脳ペット。生物としてのペットの持つ要素を、人間が再現しようという試みから生まれた人工愛玩動物。バーチャルなものから、動物をうまく模したもの、そして医療に用いられるものまで、様々な最新電脳ペットをご紹介しよう。

こういった電脳ペットは、人々にとってどのような意味を持つのだろうか。電脳ではない「ペット」、すなわち愛玩動物・伴侶動物は、何をおいてもまず動物である。人と同じく体調が悪くなれば医者に連れて行かなくてはならないし、機嫌が悪い時もあれば、老化もする。手間もかかれば、食費も、医療費も当然ながらかかる。このことから、悲しいことに飼育の難しさなどから捨てられたりするものもいる。

一方で電脳ペットは生き物ではなく「電脳」、つまりコンピューターであることがその本質にある。電脳ペットと言っても様々なものがある。例えば「たまごっち」や、ゲーム『ニンテンドッグス』など、物理的な体を持たないものも電脳ペットと呼べるし、ソニーのロボット犬AIBOはより動物を模した物理性を持ったものと言えるし、独立行政法人産業技術総合研究所(産総研)のパロなどは、また違った役割を備えた電脳ペットだ。このような様々な電脳ペットを今回は紹介していく。

体を持たない電脳ペット

電脳ペットの中でも、実体を持たない存在、それが「バーチャルペット」だ。前述したように、筐体はあるものの、ペットとしては物理性のないビデオゲーム『ニンテンドッグス』などがよく知られるものだろう。この実体を持たないという特性や、スマートフォン技術の進歩により、最近ではスマホアプリとしてのバーチャルペットも数多くみられる。おなじみ「たまごっち」も『スマホで発見!!!たまごっち』として登場したほか、ウーパールーパー、クトゥルフ、猫人間など、多種多様、奇々怪々なバーチャルペットが出てきているようだ。

今後このようなバーチャルペットは複合現実により新たな進化を遂げる可能性を秘めている。サブドリーム・スタジオ(Subdream Studios)のVR/仮想現実ゲーム『Dream Pets VR』などはその一端を垣間見せてくれるものであろう。

動物を模した電脳ペット

動物を模した機械仕掛けの人工物としては、古くは1700年代のジャック・ド・ヴォーカンソンによる「Canard Digérateur/消化するアヒル」などが知られるところだ。これは羽ばたき、食べ、排泄するアヒル型のオートマタであり、もちろん電脳とは呼ぶことはできないだろう。だがそこからは、動物の存在を人の手で再現しようとする試みが古来より行われてきたことが垣間見える。

現代に目を移せば、この分野で他社を寄せ付けない市販電脳ペットを作ってきたのはソニーくらいなものだ。1999年の発売から2006年まで、ソニーの犬型ロボットは高価ながらも、ある程度の自律性を備えたロボットとして、その「飼い主」たちを楽しませてきた。2015年にはAIBOの合同葬が行われる動画が海外でも報じられ、機械ながらも人が生きたペットにかけるのと同じ愛情を注いできたことが話題となった。

そして、今でも世界の注目を一点に集めているのはやはり昨年末に再登場した「aibo」だった。これまで1999年から2006年まで販売されてきたソニーのAIBOが、より犬らしい顔立ちとなり、進化して戻ってきたものだ。

動物を一部模した電脳ペット

産総研のパロ、セガトイズの夢ねこなど、形状こそ動物を模してはいるが、人間に癒しを与えるという点を摘出した電脳ペットや、ノット・ア・キャット(Not a Cat)や、クーボ(Qoobo)など、動物の形状を一部のみ切り出したものがこれに当たるだろう。

パロは特に、実際の動物によるセラピーである「アニマル・セラピー」を参考に開発されたものであり、アメリカでは「神経学的セラピー用医療機器」承認も受けた医療ロボット。パロとの触れあいにより、気分の向上・不安・うつ・痛み・孤独感の改善や、認知症患者の各種症状の抑制緩和報告されている。医療用の電脳ペットとしては動かないと言うことも利点のひとつだ。動物なら逃げ出してしまうこともあるだろうが、そんな心配もなければ、思わぬ場所に寝ていて踏んでしまうなんてこともない。

元々人間と動物との関わりの中に見出されるセラピュティックな機能を切り出したパロだが、よりそれを機能的に切り詰めたものも存在する。ノット・ア・キャットとクーボは共に丸まった猫の形を模しながらも、尻尾が出ているインタラクティブ性のある電脳ペットだ。ノット・ア・キャットは触るとゴロゴロと音を出し、クーボは触ると尻尾が揺れる。どちらも元々クラウドファンディングプロジェクトであったことも興味深い点だ。

特定の動物を模していない電脳ペット

電脳ペットの中には90年代終わりに一世を風靡した「ファービー」のように実在する動物に似ていないものもある。ある意味では意図的に既存の生物と違うことをアピールした存在だ。そんな中でもコズモ(Cozmo)やミロ(MiRo)などの新世代の電脳ペットは興味深い。

日本ではタカラトミーから販売されているAnki社のコズモは、見た目はフォークリフトにデジタル画面の顔がついたようなロボットだ。小さいながらも、ピクサー社のCGアニメ映画を彷彿とさせる豊かな表情と動きを持っており、電脳愛玩の名に恥じない存在となっている。

コンセクエンシャル・ロボティクス(Consequential Robotics)社のミロは、犬とも豚ともウサギとも似つかない見た目で、脚は無いものの、移動ができ、瞬きや首や尾の動きで多様な表情を見せる。視聴覚センサーのみならず、触覚、光、超音波、など様々なセンサーを備えた、コンパニオンロボットの開発プラットフォーム。ミロは香港で3月に開催されるグレート・フェスティバル・オブ・イノベーション(THE GREAT FESTIVAL OF INNOVATION)でアジアデビューを果たすとSouth China Morning Postから報じられている。

愛玩ではない電脳

とても愛玩動物と呼べそうにないが動物を模した形の電脳ロボットならボストン・ダイナミクス(Boston Dynamics)の自律型四足歩行ロボ、スポットミニ(SpotMini)も忘れてはいけない。あの手この手でドアを開けるのを邪魔する人間をものともせず、使命を達成する姿にはどこか怖いものを感じる。これが人を手助けするロボットならよいが、SFドラマに出てくるような、いかなる手段を使ってもターゲットを追い詰め狩るようなロボットとしては出てきてほしくないものである。

ペットのための電脳ペット

ペットにとっての電脳ペットなるものも最近登場している。ペトロニクス(Petronics)社のマウザー(Mouser)は、ネズミの形をした猫のための電脳愛玩、と言っても間違いではないだろう。マウザーは猫接近センサーを備え、自動で走り回るほか、少しの障害物なら乗り越えれるし、ひっくり返っても体を元の状態に起こすこともできる。猫に捕まっても頑丈だし、スマートフォンを使って自ら操作することもできる。

ペットを飼う心構えがあっても、住宅の環境やアレルギー、金銭的な面などで飼うことができない人も大勢いる。そんな人々の心に温もりをもたらすだけでなく、時にはペットセラピーとして医療にまで役立つ電脳ペット。読者の皆さんが飼うとしたら、どんなものを飼いたいだろうか?

Dream Pets – {HTC VIVE VR}(YouTube)

The Family Dog | Robotica | The New York Times(YouTube)

aiboのいる生活 特別篇(TVCM)(YouTube)

Qoobo | 心を癒やす、しっぽクッション。(YouTube)

More humane choice of pet for Year of the Dog in Hong Kong? How about a robot?(SCMP)

Development and spread of therapeutic medical robot, PARO: Innovation of non-pharmacological therapy for dementia and mental health(J-Stage)

Is robotics a solution to the growing needs of the elderly?(BBC News)

Robots have positive effect on seniors at nursing care facilities: study(The Mainichi)

(Petronics)

Mousr(YouTube)

Testing Robustness(YouTube)