太古の洞窟壁画と音響から言語の起源に迫る

古代生物は化石となりその存在を今に伝えるが、「言語は化石化しない」というのが通説だ。しかし太古の人類が残した洞窟壁画と、洞窟の音響から、通説を覆すような言語の起源に迫る仮説が導き出された。

現生人類は20万年前に登場したとされるが、言語ができたのがいつのことなのか、そしてどの時点で人類が高度な認知能力を取得したのかは未だ謎である。しかしMITの研究者らがFrontiers in Psychologyに発表した研究では、それらの起源解明に近づけるかもしれない仮説が提示されている。

洞窟の限られた場所にしか壁画がない謎

今からさかのぼること1~3万年前、上部旧石器時代に描かれた洞窟壁画は、その90%以上の壁画が牛やバイソン、鹿などの有蹄動物のものであった。そして洞窟の中に見つかった壁画のほとんどが、洞窟の奥深いところに、狭くまとまって存在していた。洞窟には他の壁など絵を描けそうな場所はあるにも関わらず、この場所にしか描かれていないのである。

壁画と洞窟の音響の関係

音響考古学の視点から洞窟の壁画のある場所を調査することにより、これらの壁画のある場所には、洞窟の中でも音が響く場所、音響の「ホットスポット」に描かれていることが判明した。これらの場所では音が反響することで、その響きは蹄のように聞こえるという。また、逆に音の響かない洞窟空間には猫か動物の絵や、人の手形が描かれていた。

このことから、描かれている有蹄動物と洞窟の音響に関連があり、音の良く響く場所に特定の動物が描かれていることからは、音と視覚という複数の感覚が相互に組み合わさった情報伝達が起きていたという可能性がある、というわけだ。

揺らぐ通説

一口に「言語/language」と言ってもそれが包括するコミュニケーションの手段は広い。手話やボディランゲージだって言語だし、象形文字や文字だって言語、そして絵や装飾品だって、それが何らかの意図を他者に伝えることができれば言語と呼べなくはない。冒頭で述べた「言語は化石化しない」が成立するのも当然、音によってのみ伝わる言語は物理的な痕跡が残らない、という意味の通説だ。だが、今回の研究では音響という、音のやりとりに関連した間接的な要素と壁画とが共に存在する様子から、音と関連して思考体系を外部に表した言語的要素がここにある可能性が見て取れ、今回の仮説が正しければこの通説が揺らぐという点でも面白いものだ。

New study links ancient cave drawings and the origin of language(ZME Science)
The writing on the wall(MIT News)
Cross-Modality Information Transfer: A Hypothesis about the Relationship among Prehistoric Cave Paintings, Symbolic Thinking, and the Emergence of Language(Frontiers)