Credit : ESA, King's College London, UKSA

宇宙飛行士の背中の痛み、ESAのスキンスーツが改善目指す

長期間微小重力空間にいる宇宙飛行士たちは背中の痛みを訴える。そして、地球に戻ってくると椎間板ヘルニアが起こりやすい状態になっている。ESAはこれを改善するため、宇宙で着るための体にぴったりのつなぎ服、「スキンスーツ」を開発している。

椎間板と重力

 人は、地上では朝ベッドから起きるときが一番背の高い状態で、夜横になる前が一番背が低い状態である。だが微小重力空間にいる宇宙飛行士たちは常に背が高い状態にある。これはなぜかと言うと、背骨の骨と骨の間にある椎間板が、起きて立っている間は徐々に圧されて内部の液体を失い小さくなるのだが、寝ている間にはまた水分が戻ってきて元の形に戻るからだ。これにより生じる一日の身長差は1.5㎝ほどあるという。この水分の移動は脊椎を通じて行われるとみられている。

しかし、重力がほとんどない状況では、椎間板に圧力がかかることはなく、ただ膨らむのみだ。背中の靭帯や筋肉も重力に逆らう必要がなく、緩く、弱くなる。これにより、宇宙飛行士たちは宇宙では背中が痛くなり、地上に戻ると椎間板が本来あるべき場所から突出した状態、椎間板ヘルニアを起こしやすいのだ。

死海ウォーターベッド

それを改善しようと開発されているスキンスーツは、スパンデックスを主な素材とし、重力のある環境のように体を方から足まで押し付けるものだ。地上で開発されているこのスーツ、どうやって無重力空間を再現したのかというと、半分だけ水を入れたウォーターベッドに硫酸マグネシウムを加えることで、死海の水のように体が浮かぶようにしたのだ。通常は体の重い部分がその質量に応じて沈み込むものだが、この「死海ウォーターベッド」では体がほぼ水平となり、体が完全にリラックス状態となった。これを用いた長期の試験では、この状態が脊椎にもたらす影響が微小重力にいる状態の有用な再現であるとなされた。

Credit: Kings College London/Philip Carvill

そんな死海ウォーターベッドでのテストのほかにも、航空機の放物線飛行による無重力環境でもテストが行われ、スキンスーツは進化してきた。最初のスキンスーツは重力荷重80%のものだったが、着心地が悪く数時間しか着用できないものだった。より改善された6世代目のスキンスーツ「マーク6」は、月より少し強い程度の重力荷重20%のものだが、脊椎にかかる負荷としてはこれで十分。そしてなによりも重要なことに、非常に着心地がよく、通常のアクティビティから睡眠まで、長時間にわたって着用できるとのことだ。

無重力での背中の苦痛を改善するスーツ、早く宇宙飛行士たちに使ってもらいたいものだ。

WATERBEDS SIMULATE WEIGHTLESSNESS TO HELP SKINSUITS COMBAT BACK PAIN IN SPACE(ESA)

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