人はなぜ暴力的なデスメタルの音楽を好むのか…心理学者が調査

殺人、強姦、拷問、虐待、屍姦症――。グロテスクな世界観を高速のスラッシュビートと唸るようなデスヴォイスに乗せたデスメタル。聴く者を虜にするか、遠ざけるかの両極端に分けてしまう。このような暴力に満ちあふれた音楽を、一体だれがなんのために聴くのだろうか?

まったく同じ疑問を持っていたオーストラリアの心理学者たちが、「暴力的な音楽をだれがなぜ聴くのか?」というタイトルで論文を発表した。近々アメリカ心理学会の学術誌に出版される予定だという。

マッコーリー大学のウィリアム・トンプソン教授らの研究では、48人のデスメタルファンと97人のそうでない人にアンケート調査を行い、デスメタルを聴くことによってどのような感情がもたらされるか、またデスメタルのコアなファンの間に共通する性格の特徴はあるかを調べた。

まずは試しに人気デスメタルバンド、カンニバル・コープスのライブ演奏をお聞きいただきたい。

トンプソン教授の研究では、参加者に60秒間デスメタル音楽を聴かせた後に、音楽を聴いたことで感じた感情を5段階評価してもらった。すると、デスメタルファンはパワー、喜び、安らぎ、感嘆などポジティブな感情を報告したのに対して、ファンではない人の反応はストレス、怒り、怖れなどネガティブな感情ばかりだった。

暴力的な音楽を聴いた人は、その言葉の暴力に感化されてネガティブな感情を露わにするのでは?との懸念をよく耳にするが、実際はデスメタルを聴いているファンは音楽に対してウキウキしたり、普段は隠したり抑えている自分の深いところにある感情にアクセスしたり、自己のエネルギーを高めるなど、ポジティブな反応をしていることがわかった。ファンのひとりは「凹んだり、やる気が出ない時に聴くと元気が湧いてくる」と話し、また別のファンは「自分の怒りの感情と向きあえる」とも話す。

さらに、デスメタルファンに共通している性格の特徴も見出された。これはファンでない人に比べると全体的に誠実性や同調性に欠ける、といった結果だったそうだ。

トンプソン教授は、ファンとファンでない人との差があまりに広くて深いデスメタル音楽においては、少数派のファンがお互いの存在を認め合って同じ体験を共有するからこそアイデンティティが生まれ、ポジティブな感情が生まれるのではないかと分析している。

暴力的な歌詞の影響はないのだろうか?その点に関しては、なにを言っているのかはあまり大事ではなく、むしろ醸し出される雰囲気とイメージのほうが重要のようだ。第一、唸っているので歌詞をあまり聞き取れないのもデスメタルの特徴。ひょっとしたら「転んで血が出ちゃった~、アアアァァァ」とこっそり日常的な怒りを歌いこんでもバレないかもしれない。

Death metal is often violent and misogynist yet it brings joy and empowerment to fans (The Conversation)
Who enjoys listening to violent music and why? (ResearchGate)