Credit : Getty Images

子どもらしい人工知能がより機械を人間に近づける

ここ数年間で人工知能(Artificial Intelligence, 以下AI)の研究が目覚ましい進展を遂げている。なかでも、未就学児の学びのプロセスをプログラミングで再現し、AIをより賢く訓練する試みが顕著だ。

人間がコンピューターに負けた日

コンピューターの「脳」であるCPUの処理スピードが飛躍的に上がり、またインターネットの通信速度も格段と上がって大容量データのやりとりが可能になったおかげで、膨大な量のデータを使ってコンピューターに学習させる「機械学習」でAIをより賢く鍛えられるようになった。

2016年3月にはアルファ碁と呼ばれるコンピューター囲碁が世界最強の棋士に勝利し、世間を驚かせた。たった60年前に着想を得たAIは、近い将来に人の知能を追い越してしまうのでは…と危惧されるほどまでに成長したのだ。 

AIの弱点

ところがコンピューター科学や心理学の専門家によれば、現段階でのAIは弱く、決して人間の知能に太刀打ちできるものではないという。例えば、アルファ碁。「囲碁」という特定の領域内ではすばらしい能力を発揮するが、そのアルファ碁に車の自動運転を任せても破滅を迎えるだけだ。

つまり、今のAIは特化型人工知能(Artificial Narrow Intelligence, ANI)に過ぎない。汎用的で人間にとっては単純な作業ほどANIにはむずかしい。「猫」を正しく認識するために、ANIは何万、何億という猫の写真を読み込んで学習しなければならないが、子どもはきっと2、3匹の猫を見ただけで4匹目も正しく認識できるようになるだろう。

Credit: Pixabay

子どものようなAI

いかに汎用人工知能(Artificial General Intelligence, AGI)に近づけるか。ヒントはAIの父とも言われるイギリスのコンピューター科学者、アラン・チューリングの言葉にあった。

真の人工知能を達成するためには
大人よりも子どものような機械が鍵となる。

AI研究の根底にあるのは、人間の知能の源は「環境との相互作用」にあるという仮説だ。そして人間は幼い時代にこそより刺激的で、新鮮で、目まぐるしい相互作用を通じて学んでいる。

Credit: Pixabay

ボトムアップ方式とトップダウン方式

子どもがどのように世界を知るかを研究しているカリフォルニア大学バークレー校の心理学教授、アリソン・ゴプニック氏も、賢いAIを訓練するには子どもの学習の仕方に学ぶのが最適だと話す。それには「深層学習」と「ベイズ法」と呼ばれるふたつの異なるアプローチの両方が不可欠だそうだ。

深層学習はいわゆるボトムアップ式だ。先ほどの猫のように、たとえばコンピューターに大量の画像を読みこみ、ひらがなの「め」という字の共通点を探して理解させる。そこに新たな文字を提示された場合、コンピューターは以前訓練されたデータの「め」と類似しているか否かで新しい文字の識別をする。

対してベイズ法ではあらかじめ「め」のいう字を教え、概念として定着させる。そこに新しい文字、たとえば「ぬ」が提示されたとしよう。すると「ぬ」には「め」にはないループが含まれていて「め」の概念とは一致しないため、コンピューターはこれを「め」とは認識しないのだ。

このふたつが合わさってこそ、人間の子どものような学びが生まれるとゴプニック教授は確信している。 

子どもにはできて、コンピューターにできないこと

ゴプニック教授によれば、今のところコンピューターが子どもを超えられない理由は三つあるそうだ。ひとつはランダムな要素。子どもは夢中に遊びながら時にすばらしい論理の飛躍から新たなる遊びを見出すことがあり、その過程でどんどん新しい学びを吸収していく。

ひとつは、実際に体を動かして五感を働かせ、体で学んでいく過程。

そしてもうひとつは、まわりの人との情報共有だ。子どもは親や先生、兄弟や友達と絶えずフィードバックしている。親のように愛情と忍耐を持って常に接してくれる存在がもしAIにもあったとしたら、そのAIは自らの思考を微調整する機会をたくさん与えられることで、より賢くなっていくはずだ。

Credit: Pixabay

近年ではAIの発達と共に、脳科学の知見もどんどん発達している。もし子どもの脳の発達を完全に理解できたなら、それをそっくりそのままプログラムしてコンピューターに移植することも可能になるだろう。すなわち、汎用人工知能を育てるにはまず先に人間の知能を理解しなければならない。ゴプニック教授に言わせれば、その日はまだほど遠い。

What babies tell us about artificial intelligence (Berkeley Psychology)
From Babies to Robots – new book reveals the link between robot and child development (Plymouth University)
The Evolution of Artificial Intelligence (UBS)

RELATED POST