Credit : Inter IKEA

IKEA創立者イングヴァル・カンプラード氏、その人生の冒険

世界最大の家具チェーンIKEAをゼロから創り上げたイングヴァル・カンプラード氏が、1月27日にスウェーデン南部スモーランドの自宅にて静かに息をひきとった。91歳だった。 

一度でもIKEAの店舗に行ったことがあれば、そのスケールの大きさと種類の豊富さに圧倒された経験があるだろう。ポップな色合いの本棚、ソファ、テキスタイル、照明器具…。IKEAのコンセプトはデザイン性の高い家具を広く、多くの人に提供すること。そのために従来の家具の売り方を根底からひっくり返して、客側が配送と組み立てを請け負うかわりに価格を徹底的に安くした。この「フラットパック」と呼ばれる斬新な商法を確立したのも、カンプラード氏が極端にムダを嫌ったからだという。 

カンプラード氏は1926年にスモーランドのアグナリッドに生まれた。第一次世界大戦後の世相を反映して貧しい農家に育った彼は、わずか5歳で商売に目覚めてマッチや森でつんだリンゴンベリー、川でつった魚などを売り始めたそうだ。7歳になって自転車で遠出できるようになると、ストックホルムで仕入れたペンや鉛筆などを地元で売りさばくことでまとまった収入を得るようになる。

カンプラード氏が幼少期に使った商売道具。 – Credit: IKEA Museum

生まれながらに失読症を患っていたカンプラード氏だが、努力のすえ学業でも優秀な成績を修めて父親から奨励金をもらった。彼はそのお金を使って1943年、17歳の時に自分の名前と出身地の頭文字を組み合わせた「I(イングヴァル)K(カンプラード)E(エルムタリッド農場)A(アグナリッドの町)」を起業する。 

徹底した倹約家で知られた彼は、あるときポーランドから輸入されたフライドチキンを目にして、「ポーランド人は鶏の羽をどう始末しているんだろう?」と思ったそうだ。すかさず調べてみると、そのまま廃棄していたことがわかった。そこで、彼はその羽を安く仕入れてIKEAが販売するクッションの材料にしたそうだ。 

古いボルボを乗り回し、安宿に泊まり、飛行機での移動はエコノミークラスのみ。世界中のIKEAストアに予告なしで現れて、ときには顧客を装って従業員に声をかけ、ときには懇切丁寧な従業員としてフロアに立ち、ときには「安いから」と言ってIKEAの食堂でランチしていたという。

エルムフルトのイケア第一号店。現在はIKEA博物館になっている。 – Credit: IKEA Museum

そんなカンプラード氏の徹底した倹約ぶりはそのままIKEAの企業イメージにもつながったのだが、裏を返せばいかに彼がIKEAにおいて圧倒的な権力を持っていたかを物語っていた。やがて元IKEA従業員に暴露本を出され、東ドイツの秘密警察・シュタージのような組織体制だったと批判されたりもした。 

また、カンプラード氏とその家族がIKEAの巨額な収益から得ている報酬についても不透明なことが多く、脱税疑惑をはじめ、じつはおんぼろボルボのほかにもポルシェを乗り回して意外に豪勢なライフスタイルを好んでいたことも判明した。 

1994年にはカンプラード氏が20代のころにファシズムに傾倒していたことをスウェーデンのジャーナリストによって暴露され、カンプラード氏がIKEAの従業員に宛てた手紙でこれを認めて謝罪した。 

気鋭の実業家にしてIKEAブランドの世界的成功という偉業を成し遂げたカンプラード氏も、このような裏事情を抱える生身の人間だったことに変わりはない。しかし、彼を知る人々は、心があたたかく、目にはいつも遊び心が宿っていたと述べているのも事実なのだ。

Swedish IKEA founder Kamprad dies at 91 (Reuters)

Ingvar Kamprad has passed away (Inter IKEA)

Talking Shop (The New York Times Magazine)

Ingvar Kamprad, founder of Ikea, dies at 91 (Washington Post)

Ingvar Kamprad, Founder of IKEA (Government of Sweden)

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