Credit : California Department of Fish and Wildlife

野生動物の火傷、テラピアの皮を絆創膏に

去年の暮れにカリフォルニアで発生した大規模な山火事。約1140平方キロメートルを焼き尽くし、ロサンゼルス近郊に住む人々に甚大な被害をもたらした。カリフォルニア州魚類野生生物局(CDFW)に所属する獣医師のディアナ・クリフォードさんは野生動物にも被害が及ばないか心配していたが、その悪い予感は的中し、山火事発生から5日経った12月9日には手足にやけどを負ったメスの90キロのヒグマが住宅街で捕獲された。

その後も同じく手足にやけどをしたヒグマのメスとピューマの幼体が相次いで運びこまれてきた。いずれも放置しておけばおそらく死んでしまうであろう重度のやけどを負い、痛みのあまり歩けない状態だったという。

そこで、クリフォードさんはカリフォルニア大学デービス校教授で同じく獣医師であるジェイミー・ペイトンさんと協力して、ある革新的な治療法により3頭の怪我を治して自然に還すことに見事に成功したそうだ。

その治療法とは、従来の包帯のかわりにテラピアと呼ばれる淡水魚の皮を使うこと。魚の皮はコラーゲンを豊富に含んでおり、皮膚の再生を助けるという。テラピアの皮をじかに患部にあててやけどを治すブラジルの治療法にちなんで、ペイトン医師は思いきってアメリカで初めて、しかも動物には世界で初めてテラピアの皮を使ったやけどの治療を開始した。

ヒグマとピューマのやけどにはまずペイトン医師が独自に開発したハチミツ、オリーブオイル、ココナッツオイルとみつろうを混ぜ合わせた軟膏を塗り、その上に消毒したテラピアの皮を手足の形に合わせてぴったりと貼りつけた。さらにその上からライスペーパーとトウモロコシの皮を重ね、テラピアの絆創膏がはがれないように工夫したそうだ。これらの材料は、万が一ヒグマたちがかじってしまっても害のないものばかりで、実際ピューマはテラピアの皮まで食べてしまったそうなのだが、「強いていえば栄養になったぐらい」だそうだ。

Credit: California Department of Fish and Wildlife

これ以外にもヒグマたちは鍼治療とカイロプラクティックを受け(もちろん、麻酔された状態で)、さらには経皮電気的神経刺激(TENS)、パルス電磁波療法と非熱性レーザー治療など、数々のハイテクな痛みの緩和治療も受けたそうだ。

なぜここまで手を尽くしたのか。ヒグマたちの治療は時間との闘いだった。ペイトン医師は従来の治療法では完治するのに4~6か月かかると予測していたが、そのように長く飼育されるとヒグマたちが野生の習性を失いかねないという。さらに、2頭目のメスのヒグマはなんと身重だったことが判明。飼育環境においての出産は大きなリスクを伴い、場合によってはストレスに耐えられない母グマが育児放棄する可能性もあったといい、なるべく早く自然に還すことが重要だった。

幸いテラピアの皮はすばらしい効果を発揮し、やけどは数週間のうちに完治したそうだ。ヒグマたちは1月18日にそれぞれ山火事の被害のない新しいすみかに放された。その際、CDFWのスタッフが現場に先回りして、クマたちのために冬眠用のほら穴も掘っておくという終始VIPな対応だったそうだ。クマたちにはGPSトラッキングデバイスをとりつけ、今後の活動を見守っていくという。

Badly Burned Ursines Get Back on their Feet – Thanks to Teamwork and Fish Skin (California Department of Fish and Wildlife)

Thomas Fire Bears (California Department of Fish and Wildlife)

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Healing Burned Paws With Fish Skin (UC Davis)

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