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ガルウイングドア、その歴史と今

美しくも利点と欠点を併せ持つガルウイングドア、その歴史と現在を一望してみよう。

地面に垂直に軸があり、車体から外側に向かって開く一般的なドアとは異なり、車体上部に地面と水平に設けられた軸から、まるで鳥が翼を広げるかのように開く「ガルウイングドア」。「カモメの翼」を意味する英語から名付けられたこのドアは、レーシングカーとしては1952年のMercedes-Benz W194、一般販売車としてはMercedes-Benz 300SLに採用されたのが初めてだ。

しかし歴史を遡ればBugattiのプロトタイプ、1939年のType 64がガルウイングドア(もっとも、Jean Bugattiはこれを「Papillon/蝶」と名付けているが)を持った初の車と言えるだろう。だがこれが大量生産されることはなく、奇しくもJean Bugattiは、これをデザインした同じ年に死亡している。テストドライブ中に、酔った自転車乗りを避けようとして木に衝突したのだ。第二次世界大戦もまた同年から6年に渡って繰り広げられたこともあり、一度幕を開いたガルウィングドアの歴史はここで第一幕を下ろす。

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第二幕が幕を開けるのは大戦が終わってから。前述の2台のMercedes-Benzの車により、人気を博したガルウイングドアは様々なスポーツカーや、いわゆるスーパーカーに採用されることとなる。そんなガルウイングドアを採用した車のなかでも、車好きでなくとも見たことがあるアイコニックなものはDeLorean DMC-12だろう。1985年から1990年にかけて三つの映画が製作された『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズでタイムマシンとして登場したこの車は、後々のポピュラーカルチャー作品にも影響を残したガルウイングドア車となった(例えばDMC-12は今年公開される映画『Ready Player One』にも登場する)。

もともとW194がガルウイングドアを採用した理由は、三角形のフレームを用いて剛性が高く軽量な車を作る中で苦心した結果生まれたものだった。それ以降のガルウイング車では、車高が低いスポーツカータイプの車では通常の横開きタイプのドアだと天井に頭をぶつけたりして乗り降りが不便だという理由で採用しているものもあるようだ。

しかしガルウイングドアには欠点もある。ものによってはドアを開けた状態で乗車したらドアの取っ手に手が届かないというものもあるし、雨の日には雨漏りしたりするなんて話も聞く。デザインの面でも、車が横転したときにでも脱出できるようにドアが開かないといけないといけないためガルウイングドアは難しい。例えばDMC-12は窓が蹴り開けれるようになっているし、Mercedes SLS AMGはボルトが破裂してドアがヒンジから外れるようになっている。

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そして一般的な左右に開くドアと比較してガルウイングドアの大きな欠点となっているのが、ドアの開け閉めに大きなスペースを必要とすると言うことだろう。車の上部を軸に回転するため、車の横だけでなく、車の上にも十分なスペースがないと、ドアをぶつけてしまうのだ。ただし、この点は新たな時代のガルウイングドア、TeslaのModel Xが採用する「The Falcon Wing」(隼の翼)が解決してくれたかもしれない。

Model Xは前部座席のドアは一般的な左右開きのドアだが、後部座席には「The Falcon Wing」というガルウイング型に開くドアを採用している。伝統的なガルウイングドアとの違いとしては、センサーが内蔵されていることと、途中にヒンジが設けられていることがある。これにより、車の横と上に障害物があればそれを検知してドアを途中で折り曲げることにより、狭い場所や背の低い駐車場などでドアを開ける際にもぶつからないようにしているのだ。

この「隼の翼」が「カモメの翼」に置き換わる名称となり、ガルウイングドアの歴史の新たな幕を開けることとなるだろうか。

Why Don’t More Cars Have Gullwing Doors?(Popular Mechanics)

Inside Tesla’s freaky Falcon Wing doors(CNN Money)

Auto Design History: Origin of the Mercedes 300SL Gullwing, Part 3 – Mercedes Gets Convinced and Heads to New York(Core 77)

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