ずっと謎だった「ふたりの兄弟」ミイラ、最新DNA技術により異父兄弟であることが判明

遺伝子解析技術のめざましい進歩のおかげで、100年以上も謎に包まれていたエジプトのミイラ2体が異父兄弟同士だと証明されたそうだ。

英国マンチェスター大学内にあるマンチェスター博物館には同じ墓に納まっていた「ふたりの兄弟」と呼ばれる男性ミイラが安置されているが、外見が似ておらず血縁関係にあるのか疑問視されていた。今回、マンチェスター大学の科学者たちが次世代シーケンサー技術を駆使してミイラのDNAを調べた結果、ふたりは同じ母親から生まれた異父兄弟であることが確認されたそうだ。今後の古代DNA解析分野に大きな影響を与える成功例だという。

ナクト・アンク(Nakht-Ankh、写真右)とクヌム・ナクト(Khnum-Nakht、写真左)は紀元前1900年頃にエジプトに暮らした貴族だった。1907年に彼らの墓がカイロから400キロ南下したDeir Rifehという村で発見されたとき、盗掘の形跡はなく本来の姿で保存されていたそうだ。ふたりの棺は同じ小部屋に並べられていたので劣化の条件はまったく同じだったのだが、20歳ほど年下のクヌムのほうが遺体の損傷が激しかった。クヌムのミイラにはナクトほど手厚い防腐処理が施されておらず、急逝した可能性も考えられるという。

ナクトとクヌムの棺に同じ母の名、「クヌム・アア(Khnum-Aa)」が刻まれていたことから、ふたりは兄弟だろうと推測された。しかし「兄弟」のミイラが墓もろともマンチェスター博物館に移され、いざミイラの包帯が解かれた時、ふたりの骨格や頭蓋の形が大きく異なっていることが判明した。あまりに似ていないことから、ふたりのどちらかが養子だった説が浮上するなど混乱を来した。

この謎を科学の力で解明しようと、皮膚の分析から頭蓋骨の3Dモデルに至るまであらゆる研究が行われたが、いずれもふたりの違いを際立たせる結果となったそうだ。2014年にはついにDNA鑑定に及び、直接シーケンス法によりふたりが異母兄弟だと証明されたように見えたが、じつは古代DNAの鑑定においては不正確な手法であることが後々わかってきた。そこで、今回の次世代シーケンサーを使っての研究が行われたというわけだ。

DNA鑑定にはナクトとクヌムの歯が使われた。クヌムの場合は遺体の劣化が激しいのでDNAを抽出するのに一段とてこずったそうだ。そうして手間をかけてミトコンドリアDNAを解析した結果、ふたりとも同じM1a1という染色体ハプロタイプを持っていたことが判明した。ミトコンドリアのDNAは母親から受け継がれるという。そしてY染色体にはバラつきが認められたため、異父兄弟だった可能性が高くなった。

異父兄弟が共に手厚く葬られていたという事実は、古代エジプトにおいて母系の血筋のほうが父系より重視されていたこと、また、ひょっとしたら一妻多夫制が認められていた可能性を示唆しているそうだ。

The kinship of two 12th Dynasty mummies revealed by ancient DNA sequencing (Journal of Archaeological Science)

Ancient DNA results end 4000 year old Egyptian mummy mystery in Manchester (University of Manchester)

DNA study shows 4,000 year-old mummies are half brothers (ZME Science)