野生のウーパールーパーが絶滅の危機…原因は都市化と温暖化か

ニッコリしているような口とつぶらな瞳がなんとも愛らしい、爬虫類界きってのアイドル「ウーパールーパー」。1980年代にテレビコマーシャルに起用されたのがきっかけとなり、一躍お茶の間の人気者となった。

宇宙人ぽい名前だが、それもそのはず。「ウーパールーパー」は商品名として日本で作られた造語で、原産国であるメキシコでは「アホロテ(ajolote)」といささか日本人とは折り合いの悪いスペイン語名で呼ばれている。元をたどればスペイン人が現在のメキシコシティを植民地化する以前から暮らしていたアステカ民族が、神の化身と崇めて「アショーロットル(axolotl)」と呼んだことに由来するそうだ。英語ではアステカのナワトル語名をそのままとって「アクソロートル(axolotl)」と発音する。

この数々の呼び名が意味するとおりウーパールーパーが古くから人間と密接に関わってきたのは、その可愛らしい容姿もさることながら、実に神秘的な能力を秘めているからだ。

ウーパールーパーは驚異的な治癒能力を持っている。たとえ手足を1本失くしても、40日程度で完全に再生してしまうのだ。加えて、ウーパールーパーは他の爬虫類にみられる変態をせず、幼体のまま成熟する。

このような特異な性質を持つために、axolotlはアステカの死と雷をつかさどる神、Xolotlの化身とみなされた。そしていまではウーパールーパーと呼ばれて比較的に飼いやすいペットとして根強い人気を誇る一方、実験動物として、または食用として(!)日本では広く繁殖されている。

ところが今、原産国メキシコでは野生のウーパールーパーが絶滅に瀕しているそうだ。IUCNレッドリストには2006年現在で絶滅寸前のCRランクに入っており、野生の個体は100頭いるかいないか程度だそうである。生息地はメキシコシティ南部に位置するソチミルコ湖周辺のみだが、無秩序な都市開発と水質汚染によりどんどんすみかを奪われているのが現状だ。

「ソチミルコ湖」というが、元の湖はあとかたもなく消え、いまでは運河と水路が細々と残るのみとなっている。2100億人の人口を抱えるメキシコシティは今も膨張し続け、都心より地価が安い郊外にも都市化が及んでいる。そのために農薬や生活排水が直接ウーパールーパーの生息する水路に垂れ流され、水質の悪化を招いているのだ。爬虫類であるウーパールーパーは皮膚呼吸をするため、直接有害なアンモニアや重金属を吸収してしまい大きなダメージを受けてしまう。加えて、食用に放流されたコイやティラピアなどの外来種がウーパールーパーを捕食したり、同じエサの取り合いをしているそうだ。

野生のウーパールーパーが棲める環境を取り戻すための懸命な保護活動も行われている。それには地元住民の理解と協力が不可欠なのだが、そもそもメキシコシティ自体が地球温暖化の脅威にさらされ、深刻な水不足と気温上昇に悩まされている中、住民たちが自分の生活を差し置いてまでウーパールーパーを保護するというのは難しい話だ。

しかし、ウーパールーパー研究の第一人者であるメキシコ国立自治大学所属の生物学者、Luis Zambrano氏はあることに気づいた。メキシコシティはかつて広大な湖の底だった。スペイン人が水を抜いて宅地化する以前、アステカ民族は水上にいかだを組み、その上に畑を耕す「チナンパ」と呼ばれる環境にやさしいシステムを構築してAxolotlとともに暮らしていたのだ。

かつての豊かな水を取り戻すためにも、今おなじようなシステムが徐々に見直され始めているそうだ。古代文明が教えてくれるのは自然とともに生きる知恵。そして、その自然のなかにはもちろんウーパールーパーも含まれている。

How to Save the Paradoxical Axolotl (Smithsonian)
Ambystoma mexicanum (The IUCN Red List of Threatened Species)
Mexico City, Parched and Sinking, Faces a Water Crisis (The New York Times)