日本が世界に誇る発明品「蚊取り線香」の歴史とリスクとは?

日本の夏の風物詩と言えば蚊取り線香…と思いがちだが、じつは日本だけではなく、今や世界中で使われているそうだ。ざっとインターネットで検索してみると、中国、韓国、タイ、フィリピン、インドネシアをはじめとした東・東南アジア、インド、オーストラリア、北米と南米諸国、ヨーロッパと北欧、アフリカの諸国において既に蚊取り線香が定着していて、それぞれの国の名称やブランド名で親しまれていることがわかる。

南半球が夏を迎えた今、オーストラリアは蚊取り線香シーズン真っ盛り。そんなオーストラリアの研究者がThe Conversationにおいて蚊取り線香の歴史、その効果、そしてリスクを紹介している。

蚊取り線香は日本が世界に誇る発明品であるが、その誕生秘話にはセルビアとの密接な関わりがある。蚊取り線香に含まれる有効成分「ピレスロイド」は、もともとセルビアに自生していたシロバナムシヨケギク(学名:Tanacetum cinerariifolium)という可憐な花から発見された。『金鳥の渦巻』のレトロなパッケージデザインを飾る、あの白い花だ。

金鳥のウェブサイトによれば、シロバナムシヨケギクの効能が最初に見出されたのは14~15世紀頃のセルビア。ある女性がシロバナムシヨケギクの花束を部屋に飾っておいたところ、花が枯れた数日後に花の下に虫の死がいが散乱しているのに気づいたのだそうだ。その後シロバナムシヨケギクは17世紀~18世紀初頭頃にアメリカへ渡り、虫除けの効能が詳しく分析された。さらに19世紀には上山英一郎氏の手に収められた種子が日本へと渡ってきた。英一郎氏は、後に蚊取り線香を発明し、「金鳥」として知られる大日本除虫菊株式会社を創立した。

蚊取り線香の誕生にはもうひとつおもしろいエピソードがある。英一郎氏がどのように長持ちさせるかいろいろ試行錯誤していた折に、英一郎の夫人、ゆき氏が渦巻型を提案したというのだ。それまでの蚊取り線香は細長い棒状だったためせいぜい40分ほどしかもたなかったのに対し、渦巻型は最大7時間燃え続けた。夫婦の絶妙なチームワークの甲斐あって、1902年、ついに今のかたちの渦巻型蚊取り線香が日本で発売され、その後世界中に広まっていった。

ここで、蚊取り線香を使う際に留意する点をいくつか。蚊取り線香はあくまで蚊に刺される可能性を低くしているだけなので、デング熱、マラリアなど、蚊に媒介される危険な病気と隣り合わせにある生活圏では二重、三重にも防護を固めなければならない。蚊取り線香を焚くと同時に塗り薬や除虫スプレーなどを一緒に使うと効能アップが期待できる。

海外で製造・市販されている蚊取り線香のなかには、ピレスロイドの共力剤として使われる「Octachlorodipropyl ether(S-2、またはS-421)が入っているものがあり、これは要注意だ。S-2は燃焼するとbis(chloromethyl) ether(BCME)に分解されるが発がんリスクを高めると言われている。金鳥がウェブサイトでも勧告しているとおり、どの蚊取り線香も室内で使用する際は、必ず窓を開けて風通しの良い状態にして風上に置いて使うことが大切なようだ。

 

Are mosquito coils good or bad for our health? (The Conversation)

Republic of Serbia and KINCHO (金鳥)

金鳥のあゆみ(金鳥)

KINCHO 製品 Q&A 金鳥の渦巻(蚊取り線香)

Octachlorodipropyl ether (s-2) mosquito coils are inadequately studied for residential use in Asia and illegal in the United States (Environmental Health Perspectives)

Mosquito coil exposure associated with small cell lung cancer: A report of three cases (Oncology Letters)