Credit : Julius Nielsen, University of Copenhagen

寿命が数百年のニシオンデンザメ、長寿の秘訣はスローライフ?

地球上もっとも長寿な脊椎動物はニシオンデンザメ(Somniosus microcephalus)だと言われている。主にグリーンランド沖の冷たい海に生息する巨大な深海魚で、確認されているものだけで全長5メートル以上に成長するそうだ。ふだんは深海に身を潜ませているが、捕食するために海面に上がってきて魚類、居眠り中のアザラシ、時にはホッキョクグマの死肉などを貪欲に丸飲みしてしまう。

1930年代、デンマークの水産生物学者のPaul Marinus Hansen氏が同一のニシオンデンザメを偶然2度捕獲した。記録された体長をもとに成長速度を計算した結果、数年で数センチしか大きくならないことがわかったそうだ。ニシオンデンザメの異常に遅い成長速度からして、かなりの長い寿命だろうという推測はされてきたが、これまで年齢を正確に把握できた科学者は誰もいなかった。

というのは、ニシオンデンザメは他のサメと違って硬質の骨を持たないため、骨の年輪を数えるという従来の方法では年齢を特定できないのだ。そこで、コペンハーゲン大学の大学院生、Julius Nielsen氏は、他の分野で古い物の年代を割り出す方法に目をつけた。考古学だ。

考古学、または物理学において、「炭素14年代測定」という年代測定法が用いられているのはご存知だろうか。この方法を初めて法医学の分野で応用したのがオーフス大学のJan Heinemeier氏だ。Heinemeier氏の研究チームは、人の目に、生まれてからずっと変わらない状態で残る特殊な細胞があることに着目し、その細胞に蓄えられている炭素14の量により、持ち主がいつ生まれたのかを特定する方法を編み出した。

 

この方法をニシオンデンザメに応用したのがJulius Nielsen氏で、その成果はScience誌で大々的に取り上げられた。Nielsen氏たちは5年の歳月をかけて漁船に「混獲」された体長81~502センチのニシオンデンザメ28匹から目の細胞を抽出して測定した。その結果、なんと28匹の平均年齢は272歳、そして性的に成熟する年齢は156歳(±22年)だと判明した。さらに、体長が一番大きかった個体の年齢は推定392歳(±120年)だとわかったそうだ。

 

斯くして、ニシオンデンザメは地球上の脊椎動物で最も長寿な生き物だという科学的な根拠が確立された。ニシオンデンザメの長寿の秘訣はまだ解明されていないが、答えはひょっとしたら彼らのスローライフにあるのかもしれないそうだ。ニシオンデンザメは泳ぐのが極端に遅く、時速1.2キロメートルほどで水の中を移動する。加えて冷たい海に住んでいるので代謝もゆっくりで、成長するのもゆっくりときているから、人間とはまったく違う時間の流れのなかで生きているのかもしれない。

Eye lens radiocarbon reveals centuries of longevity in the Greenland shark (Somniosus microcephalus) (Science)

Greenland sharks live for hundreds of years (University of Copenhagen)

The Strange and Gruesome Story of the Greenland Shark, the Longest-Living Vertebrate on Earth (The New Yorker)

The slowest fish: Swim speed and tail-beat frequency of Greenland sharks (Journal of Experimental Marine Biology and Ecology)

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