Credit : Noriyo - 世界四大タイトルを獲得した木下晴稀選手のトリックライン

競技歴わずか4年の日本人高校生が世界を制覇!「5センチ幅のトランポリン」ってなんだ?

スラックライン大国、ニッポン

最近メディアでも取り上げられることが多い「スラックライン」をご存知だろうか。スラックラインとは、ざっくり言ってしまえば綱渡り。二点の支柱に張られた平たい5センチ幅のベルトに立ち、いろいろな技を楽しむスポーツだ。発祥はアメリカのクライマーたちがロープを使って始めた遊びとされるが、近年は競技として普及しており、なんと日本人選手が世界的にも強い存在感を示しているという。

2013年には、大杉GAPPAI徹氏がW杯で優勝という快挙を成し遂げ、世界のトップライナーとして名を連ねた。さらに若干16歳ながら「X GAMES 2016」(米国)、「NATURAL GAMES 2016」(フランス)、「SLACKLINE MASTERS 2016」(ドイツ)で優勝を飾り、今年は10万人が集まる「GO PRO MOUNTAIN GAMES」(米国)で優勝し、世界の四大タイトルを手中にしたのが木下晴稀/高校3年生。当然、世界ランキング1位。ニッポンは、いつのまにかスラックライン大国になっていたのだ。

トリックラインをかっこよく決めるのはスラックラインの醍醐味のひとつ – Credit: Noriyo

子どもから大人まで楽しめるニュースポーツ

そんなスラックラインが、サーカスや大道芸などの綱渡りと大きく違うのが、使用する「ライン」がサーカスなどのテンションのかかったワイヤーなどではなく、「スラック=ゆるい」幅広のベルトラインであるということ。「5センチ幅のトランポリン」ともいわれている。

ゆえに上下左右に揺れ、適度のテンションによりジャンプも可能。初心者にとっては、立てたかと思ったらすぐ落ち、やっと歩けたかと思ったらすぐ落ちる。それで汗びっしょり。しかし何度かチャレンジするうちに立てるようになり、数歩歩けるようになる。特に子どもたちの上達が早いのも特徴だ。

参加したその日から楽しめるスラックラインは道端の遊びに近く、笑顔がいっぱいになる。

「3秒立てたよ」「1メートル歩けた」「もうちょい!」「すごいっ!」

仲間や家族の声援も笑顔の輪で盛り上がる。小学生のお子さんとお父さんお母さんが遊び感覚で競いあえるスポーツなのだ。(ただし、バランス感覚のいいお子さんの方が、親御さんより先に上達するはずです)

小さい子どもでも安全に始められるスポーツとして注目を集めている – Credit: Noriyo

2017年11月19日「第1回スラックライン全日本選手権大会」(主催:日本スラックライン連盟/JSFed)が西東京市総合体育館で開催された。この大会はプロ・元プロが参加せず、小学生・初心者が参加可能なアマチュアだけの大会だ。が、アマチュア選手と侮ってはいけない。中学生の日本ランカーもいれば、日本オープンの入賞者もおり、レベルは非常に高い。大戸元気選手(9歳・小学4年生・スラックライン歴2年・日本ジュニア男子ランキング5位)

9歳ながら大人顔負けのパフォーマンスを魅せる元気君。今回の大会では総合8位と大健闘 – Credit: Noriyo

大戸:小学2年生の時に、スラックラインを初めて体験しました。最初に乗ったときは手をつないでやっと立てた感じだったんだけど、すぐに立てるようになり、その場でスラックラインが好きになりました。それからお父さんにスラックラインができる施設を探してもらって、週に3〜4回練習しています。将来の夢は年間チャンピオンになること。当然、世界も目指しています。

クライマーたちのトレーニングが発祥!?

スラックラインは、60年代にカリフォルニアのヨセミテ国立公園などに集まるクライマー達がクライミングギアを使って、遊び感覚で「バランス感覚」「集中力」「体幹」を鍛えるトレーニングとして始めたというのが通説。当時は、「高さ/ハイライン」と「距離/ロングライン」を仲間うちで競うことが中心で、現在のような宙返りやジャンプなどのアクロバッティブな「フリースタイル/トリックライン」は行われていなかったようだ。

「フリースタイル/トリックライン」が行われるようになったのは、2007年のこと。ドイツのギボン社が、平たい5センチ幅のラインと両端を簡単設置できるラチェットコンセプトを開発販売することで、街中や公園で誰しもが楽しめるようになり、スキルと同時に新しいエクストリームスポーツとして世界中に一気に広がった。まだまだ約10年と歴史の浅いスポーツだが、今やW杯も開かれるほどの人気獲得と拡散をみせている。

田口千夏選手

(13歳・中学1年生・スラックライン歴4年・全日本女子ランキング10位)

ダイナミックなパフォーマンスとは裏腹におとなしい性格の田口千夏さん – Credit: Noriyo

田口:小学4年生のとき、キャンプで初めてスラックラインを体験し、一瞬で好きになりました。もういちどやりたくてお父さんに頼んで調べてもらったんですけど、住んでいる新潟には施設がなく、長野のスラックラインパーク小布施まで体験しに行き、ますます好きになって小布施スラックライン部に入りました。スラックラインの楽しみは毎日新しいワザに挑戦できることです。だから練習が楽しくてしょうがないんです。新潟から小布施までは遠いので、毎日練習できるようにお父さんが手作りでスラックラインのラックを作ってくれました。それで二人の妹と三人で毎日練習しています。将来の夢は大きな世界大会に出場することです。

大会で繰り出される超絶美技に酔いしれる

大会が始まる。ラインの高さは三段階から選べ、60秒間の演技で競い、審査される。ここに老若男女の区別はなく、小学低学年も女子もシニアも同じライン上で競われる。

30秒間の試技タイムがあり、それから本番が始まる。ラインに立ち、ジャンプし、膝で着地し、また跳ね上がり、背中で着地し、その反動で起き上がりつま先で立つ、そして宙返り。見ていても実に楽しい。トン、トン、トンとリズミカルに跳ね、そして止まる。うまい選手になると、高く上り詰めた空中で止まったように見える。エアーが決まった瞬間だ。

ちなみにスラックラインの技は700~800種とも言われているが、そのうちの約3割を、日本における先駆者、大杉GAPPAI徹氏が開発したと言われている。

石田創真選手(21歳・介護士・スラックライン歴2年)

 

石田選手がこの日の第1回スラックライン全日本選手権を制した – Credit: Noriyo

石田:偶然通りかかった神戸スラックラインパーク・クロ二ックという施設で、窓越しから女の子がラインの上をピョンピョン飛び跳ねるのを見て興味津々になり、その場で体験、そして入会。それからずっとです。憧れの大杉GAPPAI徹さんがいろいろなオリジナルの技を開発したりしてくれているから、僕らがあるんだと思います。実は僕もオリジナルの技を開発しています。スラックラインは自分を成長させ続けていると思っています。きつい介護の仕事ができているのもスラックラインをやっているおかげだと思います。

この大会の初代チャンピオンになるために三ヶ月間、みっちりトレーニングしてきたとのこと – Credit: Noriyo

これからスラックラインをはじめる人たちへ

木下晴稀(17歳・高校3年生・レッドブル・アスリート)

2017 GO PRO MOUNTAIN GAMES スラックライン世界選手権優勝

世界選手権で優勝したことでエヴァンジェリストとしての活動も – Credit: Noriyo

木下:僕は中学2年から始めて、スラックライン歴4年で世界タイトルを穫りました。でもアクロバティックなトリックラインだけがスラックラインではありません。始めからトリックラインを目指すと難しくて挫折してしまいそうですが、スポーツというより遊び感覚で、立つ、歩く、座る、ちょっとジャンプぐらいから始めて欲しいですね。スラックラインは小さな喜びの連続。自分だけの小さな喜びが感動になります。とにかく奥が深いのでまったく飽きることがありません。ひとりでも多くの人にスタックラインを楽しんでもらいたいです。

この大会には参加しなかったが、デモンストレーションで美技を披露した – Credit: Noriyo

スラックラインは、ラインと両端を固定するラチェットコンセプトさえ準備すれば、公園などですぐにでも始められるスポーツ。屋内でラインを固定するラックもあり、地方自治体、スポーツジムでも導入されるケースが増加しているので、まずは近場で体験できるところがないか、探してみるといいかもしれない。

※公園の樹木に固定する際は、必ずツリーウェア(木の保護材)を使用してください。

スラックライン連盟ホームページ http://jsfed.jp/

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