“人工衛星「みちびき」がもたらす豊かな暮らし” 三菱電機株式会社 宣伝部 片山泰治【特別講演】

2017年11月19日(日)、福岡市科学館で開催された「コズミックカレッジ2017」に、360組を超える応募総数から当選した214組の親子連れが参加した。「コズミックカレッジ」は、宇宙の不思議と宇宙を目指す人類の挑戦をテーマに、映像と実験を組み合わせ解説していく体験型サイエンス教室。9月の東京会場を皮切りに全国5都市(東京、神戸、名古屋、札幌、福岡)を巡ったイベントのフィナーレは、2017年10月1日に新しくオープンしたばかりの福岡市科学館での開催となった。

真新しさの残る館内は、九州最大級、直径25mのドームシアター(プラネタリウム)を有し、「宇宙・環境・生活・生命」の4つのテーマに沿った基本展示室と企画展示室とで主に構成される。宇宙コーナーでは、無重力空間への備えとして宇宙飛行士の訓練で実際に使われていた“ゼロトレーナー”や、“銀河トラベル”など、子どもから大人まで楽しめる体験型展示物が特に人気を博している。

福岡会場では、人工衛星のリーディングカンパニーである、三菱電機株式会社より宣伝部 片山 泰治(かたやま やすはる)さんが登壇し、特別講演を行った。

—三菱電機と聞くと冷蔵庫やエアコンのイメージあるんですけど、人工衛星も作っているんですね。 

片山:CMの影響で家電メーカーのイメージを持たれがちですが、実は人工衛星や大型望遠鏡など、宇宙事業にも力を入れています。特に、人工衛星は数多く手掛けています。例えば、天気予報で皆さんにもお馴染みの静止気象衛星「ひまわり」はその一つです。また「みちびき」という人工衛星も今年の10月には4号機が打ちあがったことで、4機体制が確立されようとしています。 

—天体望遠鏡から人工衛星まで作っているなんて、まさに宇宙を舞台にしているんですね。

ところで「みちびき」がどんな衛星かすごく気になります。ぜひ教えてください。 

片山:人工衛星そのものの話からすると、人工衛星には役割に応じて幾つかの種類があります。例えば、先ほどの「ひまわり」のように地球を観測・見たりする「気象衛星」。テレビ放送に使われたりする「通信衛星」。そして、GPSなど自分たちの位置の情報を教えてくれる「測位衛星」などがあります。「みちびき」は測位衛星という種類の衛星で、自分が今いる位置を正確に教えてくれる人工衛星なんです。

—正確にわかるといっても、どれくらいのレベルの正確さなんですか? 

片山:いきなりだと難しいので少しずつ説明しましょう。皆さんカーナビは知っていますか?

そう、クルマの道案内をしてくれるものですね。カーナビはアメリカの測位衛星、GPSの電波をたよりに、今自分は地図上のどこにいるか調べて、道案内をしてくれます。けれど皆さんの中にも、カーナビの案内表示と実際の道路や交差点が違っていたとか、ずれてるなって体験された方はいらっしゃいませんか?実はGPSの電波だけでは10メートル近いズレが出ることがありますが、「みちびき」はそのズレをセンチメートル単位で補正してくれるんです。 

—センチメートル単位って、一歩のズレでもわかるってことですか? 

片山:おっしゃる通り。たとえばGPSだけでも自動車がどの道を通っているかまではわかりますが、「みちびき」は2車線の道でどちらの車線を走っているかまで教えてくれるようになります。 

—へええ!段違いの正確さってわけですね。「みちびき」はどんな技術でナビゲーションを良くしているんですか?

片山:アメリカの測位衛星、GPSは空にいくつも飛んでいて、その電波を受けて位置を計算で出します。けれど、ビルなどに遮られると情報が不正確になります。一方「みちびき」は、ほぼ日本の真上を飛行するので空が見えていれば「みちびき」の電波は確実に受けられます。GPSからの電波と「みちびき」の電波を合わせて受けることで、より正確な位置がわかるというわけです。 

—「みちびき」が日本のほぼ真上にあるのがポイントなんですね! 

衛星の位置を日本のほぼ真上にキープするため、「みちびき」の軌道・通り道には8の字を描くように飛ぶという大きな特徴がある。続いて会場画面には「みちびきの8の字軌道」についての映像が映し出される。

解説によると、「静止衛星」という地球の自転と同じタイミングで周回しているため、地上からは空の定位置に静止して見える衛星がある。この静止衛星の通り道は「静止軌道」と呼ばれ、これに一工夫加えたのが「みちびき」の通り道になるのだそうだ。その工夫とは、静止軌道に対して傾斜をつけること。これによって「みちびき」は日本の上空まで飛行することが可能になるという。こうした軌道は「準天頂軌道」と呼ばれ、日本の位置から衛星の動きを追うと、8の字を描いて飛んでいるように見える。この準天頂軌道に複数の衛星を投入すると、日本の上空に交代で常に衛星がいるようにできる仕組みだ。 

—「みちびき」は南半球の上空にも現れるってことですからインドネシアやオーストラリアでも役に立ちそうですね。 

片山:その通りです。実際、アジアやオーストラリアでは「みちびき」を活用した位置情報のサービスが研究されているんですよ。日本では今年4機の「みちびき」が揃うので、来年度から本格的な運用がスタートしていきます。 

「みちびき」によってこの世界はどう変わるのか? 続いて、正確な位置情報を農業に役立てるべく行われている画期的な実験が紹介された。 

片山:この実験ではトラクターとか大きな機械が活躍していて、少ない人でもたくさんの収穫をあげているんだけど、「みちびき」を利用すればもっと手間をかけずに作物を育てられるという実験をしているんです。日本だと北海道で同じような実験がされているんですが、なんだと思いますか?

会場の正解画面に映し出されたトラクターの運転席は無人。肥料や、水を撒くのも全て自動運転で、コンピュータによりトラクターが正確に制御されている様子が映像で流れる。作物が植わるうね幅は40センチ。一方トラクタータイヤの幅は30センチ。つまり作物とタイヤまでの距離は、たった5センチしかなく、わずかなミスも許されない。しかし「みちびき」のサポートがあればクリア可能だという。 

—位置情報が正確になると、色々なことができるんですねえ。 

片山:正確な位置情報がわかれば、自動運転の大きな進歩にもつながるんです。例えば、はたらく車っていろいろありますよね?ブルドーザーやバス、電車が自動になったらどんな世の中になると思いますか?あとドローンのようなラジコンが自動になったら、色々なところに飛んで行って自分の代わりに様子を見てきてもらったり、お使いもしてもらえるようになるかもしれませんね。「みちびき」で正確な位置情報がわかるようになると、みんなの暮らしがもっと便利に変わる可能性が大きく広がるんですよ。 

人工衛星がもたらす、より豊かな社会の実現に参加者それぞれが思いを馳せる中、講演が締めくくられた。 

敬称略


「コズミックカレッジ」は、人類のフロンティアである宇宙の不思議と宇宙を目指す人類の挑戦をテーマに映像と実験を組み合わせ、解説していく体験型サイエンス教室。9年目を迎えた今年は、ディスカバリーチャンネルのハイクオリティな映像とJAXAのホンモノ実験教室、さらにNHK「コズミックフロント」の高精細な映像で、宇宙への学びを深めてもらう機会を提供することを目的とした新プログラムの開発を行い、宇宙開発分野で世界をリードする三菱電機株式会社の特別協賛を得て、全国5都市(東京、神戸、名古屋、札幌、福岡)で開催された、他に類を見ない無料イベントだ。

上記の片山 泰治さんの講演は、福岡会場での講演会の一部を抜粋した。 

学びの楽しさを実際に体験することで学校の成績もグングン伸びることが報告され、注目を集める「アクティブ・ラーニング(能動的学習)」。ディスカバリーチャンネルはコズミックカレッジをはじめとするイベントや放送を通して、アクティブ・ラーニングを支援している。

RELATED POST