Credit : Creative Commons

ゾンビは実在するのか?民間伝承としてのゾンビ

映画にテレビ、コミック、様々なエンターテインメント作品に登場する生ける屍「ゾンビ」。「でも、ゾンビは本当に居るの?」シドニーに住む8歳のジェームズ君のそんな素朴な疑問に、答えられる大人はいるだろうか?

The Conversationでは、豪ニューカッスル大学の古代史と古典言語の准教授であるMarguerite Johnsonが答えている。Johnsonによれば「ゾンビ」はハイチの民間伝承に出てくるものであったという。

ハイチには何百年も前にアフリカから奴隷が連れてこられたという歴史がある。ブードゥー教は奴隷達と共にハイチにもたらされた。ブードゥー教には主神がいるものの神は複数存在し、他にも精霊が多数存在する。奴隷の間の民間伝承では人の魂はブードゥーの神により魂が墓からアフリカまでつれ戻るというのだが、もしその人が生きているときに悪い行いをしていればゾンビになるとされる。

精霊の一人である黒いシルクハットに黒いコートを着たブードゥーの精霊バロン・サムディを怒らせるとゾンビにされてしまう可能性が高くなるともされる。またハイチの他の民間伝承ではゾンビは魔術師により作られるともされる。例えばふぐの毒などによるパウダーを作り飲ませることにより、その人物が死後にゾンビになり魔術師の奴隷となるというものだ。

これらの話や実際にゾンビがハイチに住んでいるという報道などが100年ほど前にアメリカに伝わり、アメリカの学者やリポーター達がハイチにゾンビを探した。そしてこうして現代に伝承された話がエンターテインメント作品となっていったのだ。

Johnsonはジェームズ君の疑問に単純に「はい・いいえ」で答えること無くこのような歴史を説明し、現代エンターテインメント作品で描かれるゾンビを「現代の民間伝承」と表現している。しかし私たちを怖がらせるために作られたこのような現代の民間伝承には「ヒーローかヒロインも登場し危機から救う」ともJohnsonは語り、質問者ジェームズ君を怖がらせまいとしているようだが、よくよく考えればJohnsonはゾンビの存在を否定も肯定もしていないことがわかるだろう。

興味深いのは、Johnsonの語るハイチの民間伝承に出てくるゾンビと、「現代の民間伝承」に出てくるゾンビとが異なる点だ。元々のゾンビは、「現代の民間伝承」すなわち現代のエンターテインメント作品に出てくるゾンビと違い、人肉を食らうというものでもなければ人を噛んでそこからゾンビ・ウイルスに感染するというものでもなかった。ゾンビを題材にした映画でも初期のものである『恐怖城/ホワイト・ゾンビ』は、ハイチを舞台にゾンビマスターがゾンビ・パウダーにより人々を奴隷であるゾンビにする様子が描かれた1932年のホラーものであり、ここで語られた民間伝承に近い存在だった。

そんなゾンビが人肉を食べ始めるのは、ジョージ・A・ロメロの『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』がはじめとされる。後のゾンビ作品のベースともなった『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』ではあるが、この作品は2007年に『アイ・アム・レジェンド』としても映画化された1954年のリチャード・マシスンの小説『I am Legend』にインスパイアされたとされている。『I am Legend』は「ゾンビ」ではなく、同じく死から蘇るものの「吸血鬼」に近い伝染病として描かれている。吸血鬼の歴史にも興味のある方はD-NEWSの「ポーランドで「吸血鬼」の墓を発見?」の記事も合わせてお読みいただくといいだろう。

以前、日本のディスカバリーチャンネルでも放映されたアンソニー・ヘッドの『怪談の検証』(True Horror)という番組では、ヘッドらがハイチのブードゥー教の司祭や心理学者、そしてゾンビとされる人などに会う様子が描かれていた。

Curious Kids: Are zombies real?(The Conversation)

RELATED POST