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深海から生まれる抗生物質…知られざる医薬品の世界

「AMR」こと「薬剤耐性」という言葉を目にしたことはおありだろうか?抗菌薬、抗生物質に耐性を持った薬剤耐性菌が増えていることが、現代世界的に問題になっている。その一方で新たな抗菌薬の開発は減っており、厚生労働省も薬剤耐性対策を国際社会でも「大きな課題」としている。そんななかで、イギリスのブリストル大学の研究者達が、合成生物学と遠隔操作深海探査機による海底サンプリングにより抗菌剤耐性に挑んでいる。

ブリストル大学によれば、20世紀半ばまでの薬は、自然の中から発見されたものが主だった。それが1980年代や90年代では、化学構造への理解やコンビナトリアル化学の発展が薬業界を塗り替えてきたことで、「自然からの発見」的な手法からは目が背けられてきた。しかし現在、合成生物学の発展により、再度自然の中からの発見に注目が集まっている。合成生物学により、抗生物質として使うことのできる天然産物の発見や天然産物の最適化が急速に進んでいるのだという。それに加え、技術の進歩によりこれまで地球上で人が探索できなかった領域を無人の探査機で調べられるようになったことが、抗菌薬の開発に新たな扉を開こうとしている。

ブリストル大学の研究チームは遠隔操作深海探査機により大西洋の海底4.5kmから微生物のサンプルを採取し、それらを新たな抗生物質に活用しようとしている。深海というある極限環境に居る微生物は、進化圧に晒されてユニークな代謝をもつ可能性もある。そんな微生物からはこれまでに無いような興味深い「自然からの発見」があるのではないか、というのだ。海底から採取されたサンプルは研究室で培養され、これまでに性質が不明であった1000足らずの微生物を分離することに成功しており、抗生物質につながる自然に生み出された新物質も6つ見つかっている。

関連した研究としては、これまでに日本海深海から採取された細菌「Verrucosispora maris」が生み出す天然産物「abyssomicin C」から、これを人間や動物に用いることのできる抗生物質に最適化させようというものがある。

全ての抗生物質の70%が微生物や植物により「自然に生み出された」化学化合物からなるという。これまで人に知られることの無かった場所に存在する微生物が、薬剤耐性に悩まされる現代医療を救う新たな鍵となるようだ。

Antibiotic Discovery in the Abyss(University of Bristol)

薬剤耐性(AMR)対策について(厚生労働省)

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