Credit : Yi Cui Group, Stanford University

将来的に衣替えはなくなるかも?暑さと寒さ両方をしのげる新素材

防寒対策と防暑対策という真逆の機能を一枚に兼ね備えたリバーシブルな新素材が発明された。スタンフォード大の研究者が発表した最新の研究によれば、この素材の表裏を使い分けることで、人間の温熱快感帯のふり幅を最大6.5℃も広げられるそうだ。

この新素材の秘密は遠赤外線の透過性にある。人は汗をかく他にも遠赤外線を放射して体から熱を逃がしているのだが、従来衣服に使われてきた素材は遠赤外線を通せなかった。遠赤外線が衣服にこもると人の肌から熱を放出できず、温度管理もむずかしい。そこで、材料工学、電気工学、機械工学の三つの分野の専門家が共同で遠赤外線を通せる新しい素材の開発に着手した結果、今回の研究に先立って2016年に「nanoPE」と呼ばれるプラスチック製の安価な新素材を発表した。

「nanoPE」は通気性と遠赤外線の透過性のどちらも備えているため防暑機能に優れ、着ているだけで2℃ぐらい涼しくなれるそうだ。もともと赤外線を通す性質を持つ台所のポリエチレン製ラップから着想され、衣服として着用できるように不透明な素材に仕上げられた。

Credit: Yi Cui Group (via Science Advances)
 

さらに今回のリバーシブル素材は、異なる厚さの「nanoPE」に放射率の高い炭素(トップ写真の黒い面)と、放射率の低い銅(メタリックな面)のレイヤーを加えることで、防暑と防寒のどちらにも対応できるようにしたそうだ。上の図のBのように、炭素側が表に面している場合は空気、遠赤外線ともに放射がさかんになり、熱を逃がして人肌を涼しく保てる。逆に、Cのように銅側が表に面している場合では、銅のレイヤーが放射率を下げ、肌と分厚い「nanoPE」の層との間に熱を蓄えるために暖かく保てる構造となっている。

このリバーシブル素材を身にまとえば、ヒーターやエアコンで部屋全体の温度を調節しなくても個人レベルで温度管理ができるようになる。スタンフォード大のYi Cui教授は、安く量産化できるよう更に開発を進めて、グローバルな光熱費削減につなげたいそうだ。

まだ実際に着られる衣服の開発には至っていないが、今後このリバーシブル素材を使ってどんなファッションが展開するのか楽しみだ。ゆくゆくはお気に入りの一着が一年中活躍し、衣がえをしなくてすむようになるかもしれない。

A dual-mode textile for human body radiative heating and cooling (Science Advances)

Double-duty textile developed by Stanford researchers could warm or cool (Stanford University) 

Stanford engineers develop a plastic clothing material that cools the skin (Stanford University)

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