Credit : The Nelson-Atkins Museum of Art

ゴッホの絵の中からバッタの死骸あらわる

テキサス州のネルソン・アトキンズ美術館が発表したところによれば、同館のフランス絵画コレクションを点検していた際ゴッホの名画「オリーブの木々(Olive Trees)」から小さなバッタの死骸が発見されたそうだ。

3㎜にも満たないあわれなバッタのバラバラな体を、上の画像から見つけられるだろうか?ゴッホ独特のぶ厚い絵具の層に塗りこめられており、実際美術館に足を運んで絵の前で探したとしても一般人には見つけられないほどわかりにくいそうだ。ちなみに、バッタの亡骸は一番右端手前に描かれているオリーブの枝のゆらめく影のどこかに潜んでいるそう。

実は絵の中に絵具以外のものが塗りこめられること自体はさほど珍しくないようだ。好んで戸外制作に精を出したゴッホは、バッタの他にも草や葉、砂塵やハエなどをしばしばキャンバスに塗りこめており、それを自覚していた。1885年にゴッホの実弟、テオに向けた手紙には、「君が受けとることになる四つのキャンバスからは、優に100、いやそれ以上のハエをつまみ上げただろう」と記している。

このようなことから、ゴッホの絵を鑑定していた美術修復員のメアリー・シェーファー氏がバッタを発見した当初は葉っぱかなにかだと思ったらしい。しかしよく見ると、キャンバスから見つめ上げていたのは紛れもなくつぶらな複眼だった。シェーファー氏はこのバッタの死骸を手がかりに、絵が描かれた時期を特定できるかもしれないと考えたそうだ。

Credit: The Nelson-Atkins Museum of Art
 

そこで古昆虫学者のマイケル・エンゲル氏に鑑定を依頼した結果、バッタには胸郭と腹部が欠けていることがわかった。更にバッタのまわりの絵具がかき回された形跡がなかったことから、ゴッホの絵に付着する以前から死んでいた可能性が大きく、絵の年代を特定するヒントにはなりえないという判定だった。

ところで、今回の鑑定ではもうひとつ、学芸員にとってはバッタを凌ぐほどの大発見があったそうだ。それは、ゴッホが時間の経過とともに薄れる性質を持った赤い絵の具を使っていたということ。この赤が単色、もしくは混色で使われた部分は、ゴッホが描いた時と今とでは見え方が異なっている可能性があるそうだ。色構成はゴッホにとって重大な課題であったという。

今後このバッタの存在がネルソン・アトキンズ美術館の画廊にいつも以上の賑わいをもたらすことは間違いないが、ゴッホの色彩についての議論も新たに賑わいを見せそうだ。

Grasshopper Found Embedded in van Gogh Masterpiece (The Nelson-Atkins Museum of Art)

The Grasshopper in the Van Gogh (NPR)

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