魚に感情はあるのか?最新の研究で明らかにされた数億年前からの進化

ポルトガルから届いた最新の研究によれば、どうやら魚も「感情」のようなものを持っていることが証明されたそうだ。魚をペットとして飼っていて、日常的に観察している人はさほど驚かないかもしれない。エサをあげる時に水槽上部にわらわらと集まってくる様子や、エサをあげない時でも物欲しげな目線をこちらに投げかけてくる姿はどこかユーモラスで、ついつい感情移入してしまう可愛さだ。

こうして魚に人間の感情を当てはめるのは簡単だが、これが科学的研究の対象となれば話は別。人間の「感情」は「気持ち」となって言動に反映されるが、その感情自体を把握するのは主観的な作業ゆえに、科学的に証明しにくいのである。研究対象が動物ならばなおさらのこと、しゃべることができない動物が「どう感じたか」を客観的に評価するのはとても難しい課題だ。最近ではイヌ、ネコなどの四肢動物を主としていた感情についての研究がさらに広がりを見せており、今回の魚の研究に至るのだが、一体どうやって魚の感情を調べたのだろうか?

研究対象に選ばれたのは欧米で広く食されているヨーロッパヘダイ。全部で96匹の魚をまず12日間にわたって訓練をし、明かりが点灯するとエサが与えられるという「いいこと」と、水槽内に沈められたプラスチック製のカゴが上昇すると魚たちが水揚げされて苦しめられるという「わるいこと」を繰り返した。実際の実験では4つの異なる環境――1)予測可能なエサやり、2)予測可能な水揚げ、3)予測不可能なエサやりと、4)予測不可能な水揚げ――に魚たちを置くことで、行動的・生理学的・神経細胞レベルの動きに変化があるかどうかを観測したそうだ。

結果は研究者たちの予測どおり、4つの異なる環境において魚たちが異なる反応を見せたという。特に、おなじ「いいこと」であるエサやりを経験した魚でも、そのエサやりを予測できたかどうかによって違う反応を見せた点が興味深く、魚たちはただ環境の変化に反応しているわけではなく、その環境の変化をどう認識しているかによって異なる反応を見せていることがわかったのだ。たとえば、エサやりを予測できる環境に置かれた魚たちは、群がったり体をひるがえしたり、ほかの魚とのインタラクションが多く観察されたらしい。一方で突然の水揚げを予測できない状況に置かれた魚たちには、ストレスホルモンである「コルチゾール」の上昇が特に顕著だったという。

なぜこんなにまで手の込んだ実験をしてわざわざ魚の感情の研究をする意義があるのだろうか。実は、研究者たちの目的は「感情」自体の進化をひも解くことにある。

ヨーロッパヘダイを含む真骨魚類は何百億年も前に四肢動物とは別の進化の道を歩み始めた。その真骨魚類にも「感情」のようなものが認められるのなら、生物はそれだけ古くから「感情」を発展させ、生存の手段として利用していたことになる。実際、今回の実験後に32匹のヨーロッパヘダイを殺処分にし、その脳内分泌を調べたところ、人間の感情をつかさどる扁桃体などに類似した部位が活発化していたことがわかった。生き物の進化において、「感情」はどのように生まれ、どのように変化してきたのか。今後の研究でさらに明らかにされるのを思うと、ワクワクせずにはいられない。

Cognitive appraisal of environmental stimuli induces emotion-like states in fish (Scientific Reports)