Credit : IQOQI Innsbruck/M.R.Knabl

量子力学でナノ磁石が浮遊する…物理の世界のミクロな視点

マクロな視点とミクロな視点、その両方が大切なのは物理の世界でも同じようだ。1842年、イギリスの数学者サミュエル・アーンショーは、浮上する永久磁石を安定させる構成は存在しないと「アーンショーの定理」で証明した。しかし、量子力学の世界ではこれは当てはまらないことをオーストリアのインスブルック大学の量子物理学者からなる研究チームが示してみせた。

このアーンショーの定理を簡単に説明すると、「ひとつの磁石をもうひとつの磁石で浮かせると、浮かんだ方は少しのことで落ちてしまう」ということ。磁石浮遊コマは安定して浮かんでるじゃないか、と思われる方もいるかもしれないが、あれはある意味この定理の裏を掻いた方法なのだ。こうして長らくアーンショーの定理は正しいとされてきたが、どうやら可視的レベル(マクロスコピック)の世界では気づかれなかった、微視的(ミクロスコピック)な量子力学的特性には、この定理には当てはまらなかったようだ。

量子の世界では、小さなナノ粒子はコマのように旋回しなくとも、磁場の中で安定して浮かぶ事ができることを研究チームは示した。磁性の仕組みにもなっている電子スピン(量子力学での電子の角運動量)が、静的な磁場の中で単一のナノ磁石を安定して浮かばせるのだ。この仕組みは磁気回転効果によるもの。磁場の方向が変化すると、磁気モーメントが電子のスピンとペアとなり、角運動量が生じる。これによりナノ磁石の磁気浮上が安定化するのだ。

まだこれは実験で観測はされていないが、研究者達はすぐに観測できるだろうとしている。このナノ磁石の浮遊は、物理学にとって新たな研究分野となるだけでなく、高精度のセンサーなど、応用技術の開発の面でも注目されている。今回の研究は、たとえ証明されている事柄においても、視点を変えることで思いもよらないような発見があることを示すいい例と言えるだろう。

Nanomagnets Levitate Thanks to Quantum Physics(UIBK)

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