東京都立園芸高校昆虫部では、部活動として「昆虫食」に取り組んでいる。近年関心の高まっている世界の食糧問題の解決のために、という観点はもちろんあるのだが、昆虫好きが高じて、「どんな味がするのか?」「美味しいのか?」という興味の方が上回っているように見えることは否めない。
昆虫食会、当日。
総勢15名の部員と担当教員が濱中くんの自宅に集合。文化系の部活動にしてはなかなかの大所帯だ。家の軒先を使い、BBQのようなスタイルで開催される昆虫食会。机の上には食材が並んでいる。
まず、ウニョウニョとすごい迫力で動くジャンボミルワーム、袋の中を元気に動き回るコオロギが目につく。どちらもペット用、釣りの生き餌として売られている昆虫だ。
そしてイナゴ、タガメ、アリの卵から、サソリ、コオロギを練り込んだパスタも並ぶ。まるで置物のようなしっかりとした形のサソリは、なんと2000円ほどしたそうだ。なかなかの高級食材である。
「それでは調理します!!」
そう言うと、カセットコンロで油を熱する。そして、そこにコオロギを投入。パンパンッ!! という破裂音がして、油が周りに飛び散る。
「油の温度が高すぎるよ!!」
と、注意が飛ぶ。昆虫には詳しくても、料理はまだまだ素人なのだ。気をつけないと、やけどしてしまう。それでも、コオロギの素揚げは完成した。みんな躊躇せずに手にとって、パクパクっと口の中に放りこむ。
「美味しいね〜」
「海老みたい!!」
と概ね好評だ。いただいてみると、たしかにスナック菓子のような食感で食べやすい。
続いてミルワームも素揚げするが、こちらはナッツみたいな味だという評価が多かった。筆者も食べてみた。素揚げの場合、見た目がモロに虫なので、口に入れるのはちょっと抵抗があったが、いったん口に入れてしまうとサクサクとした歯ごたえで確かに美味しい。ただ、やはり食べ慣れない食材なので、昆虫独特の臭いが少しだけ気になった。
「タガメは苦手!!」
という声が誰かから聞こえてきた。タガメから作っためんつゆで、そうめんをいただく。タガメはカメムシと近い昆虫で、においが強い。ただ悪臭ではなく、甘いフルーティーな香りなのだが、やっぱり慣れていないと食べづらい。同じく黄金虫もあまり評判が良くなかった。
という声が誰かから聞こえてきた。タガメから作っためんつゆで、そうめんをいただく。タガメはカメムシと近い昆虫で、においが強い。ただ悪臭ではなく、甘いフルーティーな香りなのだが、やっぱり慣れていないと食べづらい。同じく黄金虫もあまり評判が良くなかった。
「皮がすごく堅くて……。食べる場所がほとんどないですね」(阿部くん)
確かにミルワームと比べると、タガメは可食部が少ないし、臭みも強い。美味しく食べるためには、コツがあるのかもしれない。
後半はキチンと調理して食べる事にして、全員で手分けして作業をしていく。
まずはミルワームの中身から団子を作る。ミルワームの皮を身を分けて、つなぎになる豆腐と練り合わせる。ジャンボミルワーム3匹で一つの肉団子ができた。残った皮は、高温の油で揚げてサクサクのスナックにした。肉団子は昆虫から作ったとは思えない柔らかい歯ごたえと味だ。和食屋さんで出てきそうな料理だ。
別の班は、コオロギと野菜を和えてサルサを作った。サルサの中にコオロギが混ざると、まるで虫にたかられたようでちょっと見栄えが悪いが、食べてみるとなかなかよいマリアージュ。
既製品のコオロギの粉末入りパスタを茹でてペペロンチーノにする。ちょっと粉っぽい質感だけど、普通に食べることができた。ただ料理された昆虫食を実際に食べてみると、ひと味足りない気がする物も多い。
「料理自体は不慣れですから、まだまだ美味しく調理できない部分もありますね。これから試行錯誤して美味しくしていきたいです」(濱中くん)
午前中から昼過ぎまで昆虫食を食べ続けて、さすがに部員たちの昆虫食欲は満足したようだ。
取材していていちばん嬉しいかったことは、自分たちの好きなことや興味に真摯に向き合いながらも、みんながずっと笑顔だったということ。少なくとも自分の高校時代を思い出したとき、こんなに夢中になったことがあっただろうか?
都立園芸高校の園芸展(文化祭)では、この昆虫食会のことをまとめ、各料理の味の評価を星で採点するほか、昆虫食のレシピなどを発表する予定だという。これだけ熱心な体験をしたら、きっと面白い展示になることだろう。
【東京都立園芸高等学校】
東京都世田谷区深沢5-38-1
園芸展(文化祭)は11月11日(土)、12日(日)に開催
※どなたでも見学することができます
ライター 村田らむ