禅の思想がカタチになると?グラフィックデザインの世界~ハッとするデザインはどのように生まれるのか?YOHAKU第2話

ハッとするデザインはどのように生まれるのか。日本ならではのデザインの魅力とは?グラフィックデザイナーの北川一成さんが京都の妙心寺を訪れ、禅の概念に影響を受けたロゴ製作秘話について語る。

500年以上の歴史を持つ、京都
妙心寺 東海庵。ここには、ちょっと斬新なデザインを生み出すヒントが、隠れていた。

北川一成(以下、北川):アートもデザインも、なんか大工も、魚屋も、全部自分の中ではクリエイティブやと思ってて。みんなこう、人間とは何かとか、本質を見ることにずっとこう向かっていると思うんですよ。

京都府・舞鶴市の「赤れんが倉庫群」。 2012年に「舞鶴赤れんがパーク」としてオープンした。地域のシンボルとしてさらに発展するために、新しいロゴデザインを依頼されたのがデザイナーの北川一成さんだった。

北川:本来、企業のブランディングの時は、正確にこの色しかダメとか、置く位置はここって決めてあげると、何も考えずに使えるから、楽でいいんですよ。舞鶴のマークは、あの、本来、一応、あの、「赤色はこの色」「青色はこの色」って決めてるんですけど、あの、それを使い方によったら外しちゃって、「なんとなく赤」「なんとなく青」って、そのレギュレーションにかなり自由度を持たせたんですね。

実は、ロゴマークをデザインするときに、色をなんとなく決めることは、非常に稀なことだ。

北川:あの、自分たちが捉える「舞鶴らしさ」とか、そういうのを考えようっていのが、今回はテーマ、一番大事にしたことで。松山さんに会って、この庭のことか、禅のこと、何にも知らん自分に教えてもらった時に、
結構思いついたプランなんですよ。

この庭から、デザインのヒントを得た北川さん。世界でも広く知られる禅の思想が、ここにはあるのだ。妙心寺退蔵院の松山大耕副住職は、こう語る。

松山大耕(以下、松山):やっぱ、禅はあの、自分で感じるというか。体験、実践を重んじる宗教ですから。で、そこからどう自分自身の気づきを得るかっていうところが重要なんですよね。

北川:こちらの庭、何にもないんですよ。と思いきや、塀の外側に風景とか、松とか建物とか、見えてくるんですよね。ここはその、周りのあるもんを見せるために、何にもなくしたんやなっていうのを見たときにびっくりして。

松山:「無」と言いますと。例えばこの建物の作りそのものもそうですね。何もない部屋というか、特徴のないような部屋に思えるんですけど、機能はすべてあるんですよね。で、もっと直観的に言うと、光って無色じゃないですか。プリズムで分けたら7色になりますよね。いっぱい色をこう全部混ぜ合わせると、無色になるわけですよね。ですから、まあ、それと同じで、無っていうのは、何にもないように見えて、実はその中に全てあるんだと。

北川:デザインするとき、余白を結構大事だなと思っていつもやっていて。例えば、テーブルにワイングラスがあって、真ん中置いてると、安心感あってそんなに気にならんけど。端っこギリギリに置くとこぼれそう。
ものを置いたら、その余白が変わるんですよね。ここの庭で言うたら、ここが余白やったりするわけですよ。

松山:これ引く人によって、全く印象も違いますし、同じ人であっても、初めてやったのか、それとも3年も4年もずっと描き続けているのかって言うのでも
全然違いますし。

北川:舞鶴のロゴマークですけど、自分たちだったらどうしたいかって言うのを、
街の人に考えて欲しかったんですよね。やっぱ、ポップなお祭りやるときだったら、 蛍光のピンクと蛍光の青色の方がカラフルで合うかもしれない」とか。その使う人によって、いろいろ考えて、それに適したやつを当てはめられるように、したんですよ。

こうして「気軽に使えて」「馴染みやすいデザイン」が生まれた。

北川:デザインって、やっぱり削ぎ落としてって、不特定な人たちにもこう共感してもらえるような。まあ、普通のやつ。

松山:普通っていうのはどんな場面であっても、どんな人であっても、どんな時代であっても、
「ああ凄いな、これいいな」って思わせるモノが良い禅のデザインなんじゃないかなっていうふうに思いますけどね。

【プロフィール】グラフ株式会社 代表取締役/ヘッドデザイナー 北川一成 1965年兵庫県加西市生まれ。87年筑波大学卒業。89年GRAPH(旧:北川紙器印刷株式会社)入社。01年、書籍『NEW BLOOD』(発行:六耀社)で建築・美術・デザイン・ファッションの今日を動かす20人の1人として紹介。同年国際グラフィック連盟(世界約250名のトップデザイナーによって構成される世界最高峰のデザイン組織)の会員に選出。04年、フランス国立図書館に、“近年の印刷とデザインの優れた本”として多数の作品が永久保存される。11年秋、パリのポンピドーセンターで開催される現代日本のグラフィックデザイン展の作家15人の1人として選抜される。“捨てられない印刷物”を目指す技術の追求と、経営者とデザイナー双方の視点に立った“経営資源としてのデザインの在り方”の提案により、地域の中小企業から海外の著名高級ブランドまで多くのクライアントから支持を得る。出演にNHK WORLD「DESIGN TALKS plus」、テレビ東京『カンブリア宮殿』、NHK『ビジネス新伝説 ルソンの壷』他多数。著作に『変わる価値』(発行:ワークスコーポレーション)、関連書籍に『ブランドは根性_世界が駆け込むデザイン印刷工場GRAPHのビジネス』(発行:日経BP社)がある。

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