火星のヘラス平原の不思議な痕跡

この写真は直径2200kmもある太陽系最大級のクレーター、火星のヘラス平原からのもの。火星探査機マーズ・リコネッサンス・オービターがその一部を捉えた写真だ。

写真上部に見える大きなうねりを描く縁から、砂漠のような部分に向かって大きな影が落とされ、クネクネと動きながら右下の方に(方角で言うと南東にあたる)何かが引きずられたような跡が見える。だが、これは何も火星人達が通勤するときにできた跡などではない。これは雨裂(うれつ、またの名をガリ/gully)だ。火星でも標高が高いところだと冬に霜が降りるのだ。火星の霜は地球のものと違い、水でできたものではなく、二酸化炭素でできている。いわゆるドライアイスだ。NASAはこの雨裂はドライアイスがブロック状に割れて、この砂地を滑り落ちたり転がり落ちたりすることでできたのではないかとみている。

NASAは火星の雨裂を理解するために、地球の砂漠で氷や木片、ドライアイスを用いた実験も行っている。そこからは、ドライアイスはより暖かい砂に触れた部分が気化することで、少しの傾斜でも滑らかに滑り降りることが判明した。ドライアイスと砂の間に、まるでホバークラフトのように気体の層ができ、摩擦が減るためだ。なお、火星に見られるこうした雨裂は長いもので2kmにもなるが、その最後の方は細くなって突然消えている。水でできた氷であればそこに水溜まりができるだろうが、これもドライアイスだと最終的に暖まると二酸化炭素になって消えることで説明ができる。

それでもNASAの研究者達が頭を悩ませているのは、この火星の痕跡が蛇行している点だ。同じ箇所をドライアイスが何度も滑り降りることで、砂地の柔らかさなどからこの蛇行した痕跡ができたのではないかと考えられてはいる。しかし、この点に関しての明確な答えはまだ出ていないのだそうだ。

Squiggles in Hellas Planitia(NASA)

Dry Ice Moves on Mars(YouTube)