Credit : Hiroki Terabayashi

【黒田有彩のSPACE DISCOVERY】第2回 宇宙エバンジェリスト・青木英剛さん -中編

※第1回 宇宙エバンジェリスト・青木英剛さん -前編- はコチラ

中学一年のときに毛利衛さんを知り、宇宙飛行士になると決めた青木英剛さん。目的のために18歳でアメリカの大学に留学し、帰国後は三菱電機で「こうのとり」の開発に従事していましたが、ちょうどよい時期にJAXA から宇宙飛行士の募集があり…。果たして結果はどうだったのでしょうか?

とその前に、ここで宇宙飛行士試験の流れをご説明しましょう。まずは一次試験として英語の試験があります。TOEICのような試験と英語で小論文を書く試験です。一次試験に合格すると次は一泊二日で試験があります。一日目は理数系の各科目と歴史や文化などを問われる一般教養の試験。二日目は医学検査。人間ドックでも調べないような細かいレベル、何百という項目を検査するそうです。青木さんに、二次試験の難易度を聞いてみました。

「マニアックな知識とかスキルを問うというよりも、一般的な教養をみる試験でしたので、例えばSPI(※リクルート社が提供している適性検査)や、大学入試センター試験とか、そのあたりをひと通りやっていれば対応できるようなレベルだったと思います。

二日目は病院に行って、順番に体力テストをやりました。握力や肺活量、心電図とか。ひと通り人間ドック的なことをやりました。映画の「ライトスタッフ」のようなシーン。まさにあの世界ですね」

青木さんいわく、宇宙飛行士は100点満点である必要はなく、すべての検査項目で7、80点くらいあれば通るのではないか、ということです。しかしすべての項目で7、80点取ることができる人はまさにひと握り。例えば血液検査のある部分の数字だけが50点というだけで、他が良くても落ちてしまうのだそうです。青木さんの二次試験の結果はどうだったんでしょう?

「私は二次試験で落ちたんです。合否の理由はいっさい教えてもらえないので、なにがダメだったのか自分では分かりません。最低限、自分でやれることはやったという思いはあるので、結果については、神のみぞ知るという領域です」

中学一年のときに宇宙飛行士になると決めてから、すべて宇宙飛行士になることを目標に生きてきた青木さんですから、宇宙飛行士になる夢が叶わないとなったときのショックは計り知れませんが、他の受験者の方をどう見ていたんでしょう?

「それはもう、千人くらいの人が応募してきて、その人たちの中から、最終的には二人しか選ばれない世界なので、最初は比較して見ますよね。あの人たちに勝てるのかとか。

でも試験を終えてみて結局思ったのは、凄い人がいっぱいいるなと(笑)。 受かった油井さん(油井亀美也氏)でさえも、まわりにいる人がみんな凄い人だって言ってるぐらいで、とにかくみんな面白い人たちなんですよ。

いろいろな経験をしてる人、私みたいに技術者がいちばん多いかもしれないですけど、お医者さんもいますし、パイロットもいますし、とにかく面白い人ばかりなんです。宇宙とはまったく関係のない商社マンもいましたが、みんな優秀で面白い。

ライバルといえども、みんな宇宙飛行士になりたい、という共通の目標を持っていて、基本的にフランクな人たちが多かったので、すぐ打ち解けました。だから試験の日も一緒にご飯を食べに行ったりしましたし、実はいまだにそのときの人たちとは繋がっていて、たまに飲み会を開いたりしています(笑)」

そして、青木さんが応募したときに、最終的に宇宙飛行士訓練生に選ばれた大西卓哉さんと、油井亀美也さんについてはどう思われたのでしょうか?

「最後に大西さんと油井さんが選ばれたときは、非常に優秀な方々なので、この2人であれば仕方ないなと思いました。油井さんのことは、試験の会場で気づいてました。背筋がピンと伸びていて、格好よかったです(笑)」

青木さんは宇宙飛行士試験を経て、技術者という立場を越えて、宇宙開発や宇宙業界にどう貢献できるかを考えられました。その後の青木さんの活動は後編で。

最後に青木さんに『宇宙飛行士に一番に必要なことって何だと思いますか?』という質問をしてみたのですが、青木さんからは「人それぞれ」という答えが返ってきました。この答えは意外に思えるのですが、青木さんいわく、日本人宇宙飛行士のひとりひとりの性格をみても、キャラクターは皆まったく異なるそうです。つまり宇宙飛行士といえども、自分の個性はそのまま出していいのだということ。ただし、そこに至るまでの、ベースとしてのスキルが残念ながら現状では高い必要がある、ということです。確かに、課題や必要なことも「人それぞれ」にありそうですね。

そして青木さんからいただいた今回のDISCOVERYは『思ったら、やる』。

この言葉が、宇宙飛行士への道を、そしてみなさんの夢への道を確実に近づけてくれることではないでしょうか。

【プロフィール】

黒田有彩(くろだありさ)

中学時代にNASA訪問したことをきっかけに宇宙に魅せられる。大学では物理学を専攻。タレントとして宇宙の魅力を発信しながらJAXA宇宙飛行士の受験を目指す。2016年、株式会社アンタレスを設立。2017年4月より文部科学省国立研究開発法人審議会臨時委員に就任。放送大学『初歩からの宇宙の科学』『化学反応論』/ FMヨコハマ『Tresen』木曜DJ / 誠文堂新光社『天文ガイド』連載/集英社インターナショナル『宇宙女子』ほか。

【プロフィール】

青木英剛(あおきひでたか)

三菱電機在籍中には、日本初の宇宙船「こうのとり」の開発に従事し、多くの賞を受賞。現在はベンチャーキャピタリストとして技術系ベンチャー企業への投資・成長支援に従事。宇宙エバンジェリストとして宇宙ビジネスを推進する取り組みにも多面的に関与している。

青木英剛
Credit: Hiroki Terabayashi

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