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猫の肥満は「部屋の中の象」?

英語の慣用表現に「Elephant in the room」(部屋の中の象)というものがある。これは、あからさまななのに誰もが触れようとしない問題を指す言葉だ。カナダのカルガリー大学の研究により、「猫の肥満」は飼い主にとっても獣医にとっても「部屋の中の象」であることが判明した。

先進国の犬や猫の11.5~63%は肥満であるとされており、糖尿病、変形性膝関節症、心臓血管への影響、そして寿命を縮める要因ともなり得る問題だ。それでもこの話題は、獣医にも飼い主にも言い出しにくい問題のようだ。

研究では動物病院を訪れた猫の飼い主と、獣医との間の会話を動画で撮影したものが用いられた。そこを訪れた123匹の猫の診察の内、25件で肥満についての会話が獣医と飼い主の間で行われた。しかし重要なのはその会話の内容だ。獣医達は猫の肥満を話題にあげるのが苦手なようで、「とてもしっかりした体つきの猫ですね」、とか「どちらかというと重い方ですね」といった遠回しな言い方や、飼い主では無く直接猫に対して「キミは食べ損ねることはあまり無いのかな?」などと話しかけることで間接的に飼い主に猫が肥満であることを伝える例が見られた。

「部屋の中の象」である肥満問題を直接言い出しにくいのは獣医側だけでは無く、また飼い主側も獣医に猫が太っていると伝えることに抵抗がある例も見られた。猫に餌をどのようにやっているかや、減量のための提案が話に挙がった例は希であった。そのうえ、猫が太っていることを遠回しに伝えられた飼い主には、中には「そうなんですよ」と肥満を認識しているものも見られたが、獣医の意見や減量のための提案に反発する飼い主も見られた。

frontiersで公開されているこの研究「Feline Obesity in Veterinary Medicine: Insights from a Thematic Analysis of Communication in Practice」での飼い主と獣医との会話の実例は、まるでシチュエーション・コメディを見ているかのような苦笑いが漏れるものばかりだ。それを読む我々にとっては笑い話かもしれないが、肥満の猫を飼っている当人達には笑えない問題だろう。しかし今回の研究で、肥満について獣医と飼い主、両者ともにこの話題が話しづらいという問題が認識された。この「部屋の中の象」のシルエットが浮き彫りにされたことは、部屋から象を追い出すための第一歩となるのではないだろうか。

Your cat is fat: Feline obesity can lead to awkward conversations with the vet(CBC)

Feline Obesity in Veterinary Medicine: Insights from a Thematic Analysis of Communication in Practice(frontiers)

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