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癒し効果はイルカ超え!? どこまでも優しく穏やかなマナティーと人間の関係

愛嬌あふれる“ブサカワ”な顔つきに、ずんぐりとした大きな体で水の中をゆっくりと泳ぐ海生生物、マナティー。その姿を眺めているだけで、なんともほっこりした気持ちにさせてくれる“海の癒し系”だ。ジュゴンとともに人魚伝説のモデルとなった動物として知る人も多いだろう。

人の心を癒す海の生物といえばイルカが有名だが、気まぐれで飽きやすい彼らは長時間にわたって人間と遊ぶことはあまりない。一方、マナティーの人懐こさは筋金入りで、ダイバーの姿を確認するなり旺盛な好奇心で至近距離までぐいぐい寄ってくる。頭や背中を撫でてやれば、気持ちよさそうに体をゴロゴロ回転させ、「もっと!もっと!」と言わんばかりに無防備なお腹をさらけだすほどだ。

海牛類と呼ばれる草食性哺乳類であるマナティーは、成獣の大きさが3~4.5メートル、体重は300~1,000キロにも及ぶ。のんびりと動く大きな体をして「海牛」という分類名は言いえて妙だが、彼らは「象」と同じ祖先から進化したと考えられている。その名残りとされるヒレ先の爪を見れば、なるほど象の足先を彷彿とさせるビジュアルだ。

また、のんびりとした動きは象と同じく野生界に天敵が存在せず、素早い動きを必要としないことに由来する。水草を主食とし、他の生物を襲うことがないので、小さな魚たちもマナティーを恐れず、マナティーもまた何者にも警戒心を抱かない。

そんなマナティーにとって、唯一の天敵が「人間」である。かつて人間は、美味しい肉と高く売れる皮を求めて乱獲を行い、さらには開発による生息地の破壊や水質汚染などによって、マナティーの生息数を激減させてしまった。絶滅の危機にある国際保護動物に指定し狩猟を禁止するも、密猟や、船のスクリューとの接触によってマナティーが死亡あるいは負傷する事故が相次いだ。

その後、個体数回復に向けた努力の成果が実るまでには数十年に及ぶ年月を要したが、2017年3月、米国魚類野生生物局は、絶滅危惧種リストからマナティーを除外する見解を発表することとなる。フロリダ州沿岸に生息するアメリカマナティーは、1970年代にはわずか数百頭しか残っていなかったが、声明発表時点で6,620頭前後に達したためだ。

直接的行為ないし間接的要因によってマナティーを絶滅の危機に晒したはずの人間が、ひたすらに優しく穏やかな彼らの存在によって癒されている今日。世界各地で武力紛争が勃発し、国際情勢が混迷の一途をたどる中、人間が“地球上で最も平和な生き方をしている動物”とされるマナティーから学ぶべきことは少なくないはずだ。

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