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地球温暖化は1.5°C未満に抑えられる?英大学研究チームが最新調査結果発表

オックスフォード大学の気候学研究者、Richard Millarらが発表した内容によれば、温暖化を抑えるのはこれまでに思っていたよりも難しくないかもしれない。とは言え、それもこの発表内容が正しければ、の話だが。

Millarらの分析によれば、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が2013年に発表したレポートに使われた地球規模の気候モデルは、すでに起きた気候温暖化の規模を大きく見積もり過ぎていたものだった。そのモデルを調整などした結果、気温の上昇を摂氏1.5度未満に抑えたままで人類が2015年以降に排出可能な炭素の量は、IPCCの予想の3倍となった。また、二酸化炭素以外の温室効果ガスにもより積極的な対応を行うことで、排出可能な炭素の量はより増えるという。

これまで多くの化学者達はIPCC基準の炭素排出量で考えれば、もうすでに数年のうちに1.5度の気温上昇レベルの炭素を排出してしまうとしていた。つまりこの目標は達成不能だと思われていたのだ。しかし、もし今回の発表が正しければ、2015年に採択されたパリ協定の目標である「産業革命以前からの世界の平均気温の上昇を2度未満にとどめる、また1.5度未満にとどめる努力をする」を実現するのも無理ではない。

「パリ協定の1.5度という目標は不可能ではないが、ただとても、とても、難しい」とMillarは語っている。

この研究には賛否両方の意見が集まっている。一部には、この研究は温暖化が緩やかであった期間を中心にしているために、根本的に間違っているという声もある。1998年から2014年までつづいた「地球温暖化停滞」と呼ばれる期間は、環境システムの自然変動により一時的に気候の変動が抑えられたのではないかと科学者達は考えている。

今回の発表では人間が起因する気温の上昇が摂氏0.93度であると見積もられているが、米コロラド州アメリカ大気研究センターで気候モデル制作を行うBen Sandersonは、これは人為的に低く抑えられた値だとしている。現在は気候が涼しい期間であるため、人間が温暖化に与える影響が低く計算されたというのだ。

同時にSandersonは、この期間は海と陸での炭素吸収もより多くなっていると指摘している。自然のサイクルでは、そうして吸収された炭素は最終的には大気に戻ることになる。そのため1.5度の目標に至る人類の炭素排出量からこの部分も差し引かなくてはならなくなる。「このふたつの影響は、最初にIPCCが出していた結論を裏付ける説明になると私は考える」とSanderson。

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これに対しMillarらは、複数の方法論を用い、短期の気候変動から独立した温室効果ガスに起因する温度上昇を見積もっているため、「地球温暖化停滞」がこれに与えている影響は最低限だとしている。

他にも気候モデルと実際の観測での差異を記録した研究も存在する、とカナダ気候モデリング・分析センター(CCCma)の気候学の専門家、Nathan Gillett。しかしGillettはこの差異や、1.5度の気温上昇を生み出す排出量の不確定さに言及しながらも、Millarらの研究の「中核部分はしっかりしていると思う」とも語っている。

一体どれだけの炭素排出で気温が1.5度上昇するのか、それすらも正確に言うことが難しいのが現状ということだろう。様々な要因、様々な不確定要素、そして炭素以外の温暖化の原因だってあるなかで、今回のような研究の正確性にどれだけ意味があるのかと考える声もあるかもしれない。しかし、もしこの研究が正しければ、炭素排出による気温の上昇を1.5度未満に抑えることが可能という希望が見えてきたことになる。逆に言えば、この希望は「ならもっと炭素を排出してもいいはずだ」という、元々の目標を目指してやっていれば削減できていたかもしれない炭素の排出にも繋がるかもしれないが。

いずれにせよ、Millarはこう語っている。「多くの人々にとっては、パリ協定の目標が実際に不可能であれば楽だっただろう」、「我々はその目標達成はまだ可能であることを見せている。しかし本当に問うべき疑問は、我々がこれらのシナリオを実現するために実際に必要な政策行動を作ることができるかだ。」

http://dx.doi.org/10.1038/NGEO3031
http://www.nature.com/news/limiting-global-warming-to-1-5-c-may-still-be-possible-1.22627

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